「核のない世界」を遠ざけたG7広島サミット

以下は5月22日の朝宣伝の演説原稿です。2016年9月の初当選以後、月曜日と木曜日の週2回定例宣伝をし、今回で478回目です。


ご町内のみなさん

G7広島サミット――主要7カ国首脳会議が昨日、閉幕しました。

全国から警察官を2万人以上動員した物々しい警備、あちこちで渋滞が起きました。府中町内でもスーパーからパンがなくなったり、休業する飲食店もありました。

広島市内の小中学校は休校を余儀なくされました。

さまざまな不自由を強いた広島サミットですが、成果はあったのでしょうか。

岸田総理は、昨日、平和公園の慰霊碑前で記者会見し、「G7として初めて核軍縮に焦点をあてた《広島ビジョン》を出した。歴史的な意義を感じる。核兵器のない世界という理想へ今後の取り組みの基礎を確保した」と自画自讃しましたが、本当にそうでしょうか。

広島ビジョンは次のように言います。

「核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないことを確認する」

確かにそのとおりです。

「我々は、ロシアのウクライナ侵略の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されないとの我々の立場を改めて表明する」

核兵器で脅し、使用することはまかりならん。

これもそのとおりです。

しかし、次が問題です。

「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」

「核兵器が防衛目的の役割を果たす」。核兵器を脅したり使ったりしてはいけないが防衛目的なら持っていいというのは変な話です。

これは「核抑止論」という考えで、核兵器はとても大きな破壊力があるから持っていると戦争を防ぐ力となるという屁理屈です。

「核兵器を使うと、自国も相手国から核兵器による破滅的な被害を覚悟しなければならず,そのため最終的には核兵器の使用を思いとどまる」。
 
双方の「破滅的な被害」があるから思いとどまると言うんですが、それなら持たないのが一番いい。そう、核廃絶であります。

みなさん

19日、アメリカのバイデン大統領の随行者が、黒い大きなカバンを持って平和公園に入ったことをマスコミは伝えています。このカバンは核攻撃を指令する通信機器などが入った「核のフットボール」「核のボタン」と呼ばれるものです。

こういうものを常に大統領がそばに置く。それは、核兵器を、いつでもどこの国に対しても使うぞ、という「核兵器の使用の威嚇」そのものです。使うつもりのないものを世界のあちこちにもっていくわけがない。

今回のサミットで「核のボタン」を持ち歩くことに対して一切問題にしないのは、アメリカによる使用は認めるということに他なりません。

みなさん

サミットにおけるもう一つの大問題は、核兵器をなくすという課題、「核兵器のない世界」を遠くに追いやってしまったことです。

広島ビジョンは「核兵器のない世界」は究極の目標」だといいます。「究極」とは、ものごとをつきつめて、最後にたどり着くという意味だが、それはたどり着くことのできない「彼岸」と同じ意味です。

「核兵器のない世界」を彼岸してはならず、此岸(しがん)、この世のものとしなければなりません。

広島ビジョンは「核兵器のない世界」を遠くへ追いやって、「現実的で、実践的な、責任あるアプローチ」は、「世界の核兵器数の全体的な減少」と「国際的な核不拡散体制」だという。

世界にある約1万3千発の核兵器が、1発2発となり核兵器保有国が1カ国となったとしても核戦争の危機はなくなりません。

1945年8月6日広島、9日長崎に原爆が投下されたとき、世界に核兵器は2つしかなかった。

そのたった2つの核兵器が使われただけで、それぞれの街は壊滅状態になり、沢山の人が亡くなり、生き残った方々は今なお苦しんでいる。
 
ですから、核兵器を一つ残らずなくすこと、核兵器の廃絶を正面にすえることが必要です。

みなさん

核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さんはG7サミットについて「広島まで来てこれだけしか書けないかと思うと胸がつぶれるような思いがしました。大変な失敗だったと思います」と述べましたが私もそう思います。

広島市で被爆し、今はカナダに住むサーロー節子さんはサミットの共同文書が核兵器禁止条約に触れていないとして、「怒りというか本当にびっくり仰天」と話し、「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」という批判は、G7広島サミットの本質を言い当てたものです。

みなさん

G7サミットは核兵器による威嚇によって他国を抑えようという「核抑止力」論を公然と唱える一方、世界の92カ国が署名し、すでに国際法としての地位を確立している核兵器禁止条約を無視する姿勢をとりました。

「核抑止力」論の根本的な見直しと、核兵器禁止条約に正面から向き合う姿勢が、G7諸国に強く求められていいます。

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