月給を削って支給する「偽りの一時金」は許されない
第47号議案「府中町会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例の制定について」反対いたします。
(1)
①月給を削って一時金を支給
議案や参考資料を読むと、第10条で年間2.6か月期末手当を支給することになっています。
今まで出なかった期末手当が支給されて職員の年間収入が増える。普通は、そう思います。しかし、先ほどの答弁にもあったように、月給を削り、それを原資にして一時金にするというのです。
保健師・理学療法士の場合、月給200,900円を30,698円削って170,202円にする。削った分を半年ごと一時金として支給するというものです。
これまで月給として受け取っていたお金の一部が後払いされるだけのことであり、とても一時金と呼べるものではありません。
②職員を愚弄する名ばかり一時金
「朝三暮四」という有名な故事成語があります(『列子』)。
猿飼いが「おまえらにどんぐりを朝三つやって、夕方四つやろう」というと猿たちはみな立ち上がって怒り出した。そこで、「朝四つにし、夕方三つにしよう」と言うと猿たちはみなひれ伏して喜んだ。
いくつかの解釈があるようですが「ごまかすこと。うまくまるめ込むこと」や「目先にとらわれて大局を見失うこと」を意味しています。
今回の町の提案はこれより酷い。朝の分を削って夕方渡す。前に渡しているものの一部を削り、あとから渡して一時金だという。
私は長年労働問題に関わってきましたが、月給を削って一時金を支給したなどということは聞いたことがありません。まさに前代未聞であります。
形の上では一時金を出しているようになっているが実際には後払いされた給料であり、今回の提案は「名ばかり一時金」「なんちゃって一時金」「一時金偽装」とも言うべきものです。職員を愚弄するもの以外のなにものでもありません。
もちろん、来年度から会計年度任用職員となる嘱託職員のみなさんは、騙されるわけもなく、この一時金提案に落胆し、怒っているわけです。
③法改正の趣旨に反する
現在、嘱託職員は131人、全職員の3割ちかくを占め、正規職員とともに町の仕事を行っています。役場のなかを歩いても誰が正規で非正規か分からない。
ほとんどの嘱託職員が本格的で恒常的な仕事をしている。正規職員以上に仕事ができ正規職員に仕事を教えていることさえある。これが実態です。
にもかかわらず嘱託職員の処遇は正規職員よりも相当低い。労働時間は4分の3で給料は3分の1からせいぜい半分。繰り返し任用され、何十年働いても昇級はなし、通勤手当など各種手当も不十分で、年休や各種休暇でも正規職員と差がついている。今回の法改正は、さまざまな問題がありますが、わずかながらこれらの格差を是正するものです。
総務省自治行政局公務員部長名で出された「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の運用について(通知)」によれば、今回の会計年度任用職員制度の目的は、「適正な任用・勤務条件の確保」であり、期末手当については、「常勤職員との均衡なども踏まえ」支給することになっています。職員の賃金を削って一時金を支給することのどこが適正な勤務条件、常勤職員との均衡なのでしょうか。あきらかに法改正の趣旨に反しています。
④職員の生活が苦しくなる
職員は半年単位ではなく月単位で生活しています。月々決まった支出がある。月々2万円以上も減らされれば、これまで支払っていたものが支払えなくなる。生活に困るわけです。サラ金から借りて、一時金が入ったら返済せよというのでしょうか。月々減らした食事を半年後にまとめて食えというのでしょうか。
今回の提案は職員の生活を全く考えていません。ただ、一時金を出したという形式さえ整えればいいというものです。
⑤職員の労働意欲が下がる
こういう人を馬鹿にしたことをするとどうなるのか。職員のモチベーション、働く意欲が下がり、職場の空気が確実に悪くなります。
民間であろうと公務であろうと一時金は働く意欲を高めるために支払われてきたわけです。当町のやろうとしていることは働く意欲を間違いなく下げます。月々の給料は減らされ、一時金は削られた給与の後払い。気持ちよく働けるわけがありません。
職場の空気が悪くなれば町民サービスにも影響を及ぼします。
マーケティングでは「顧客満足度を上げるためには従業員満足度をあげよ」「従業員がモチベーション高く仕事に取り組むことで業務の質が上がり、より良いサービスを顧客に届けることができる」ということが言われていますが、その通りだと思います。
⑥会計年度任用職員への応募が減る、退職者が出る
町の提案は、職員の募集にも影響を及ぼします。
現在でも、放課後児童クラブなどは慢性的に人手不足、応募者不足になっており、その原因は処遇の悪さです。先ほども述べましたように、誰もが月を単位に生活している。月給が現在の15万3000円から13万円になれば、いくら一時金があるといっても応募する人はいるのか、かなり減るのではないでしょうか。
現在の職員のなかからは、生活できないから、あるいはあまりに人を馬鹿にしたことをすると転職する人も出るでしょう。貴重な人材の流出です。
このように今回の条例制定にともなう一時金支給=月給削減は百害あって一利なしです。
廿日市市は月給を下げることなく、一時金2.6か月を支給します。府中町も月給を維持したまま一時金を支給すべきです。
そのために必要な予算は5000万円程度と伺いました。府中町に出せない額ではありません。
(2)
職員の処遇に関わる重大な議案が追加議案として提出されたことも問題です。これまで、追加議案で出されてきたものは誰がどうみても異論のない内容のものでした。しかし、これまで述べてきたようにこの議案は、職員の一時金という勤務条件に関わるものです。
当初、当日(今日18日)に配布する予定だったものを、「内容が分からないのでは判断することができない」と再三抗議、要望し、13日に各議員へ配布されることになったのです。
もう一つの問題は、月額給料を下げて一時金を支給するという重大な問題について、参考資料に何も書かれていない。
正確な情報が与えられていないのでは、私たち議員は正しい判断を下すことができません。
偽りの一時金提案と一体となっている第47号議案は、手続きの点でも問題があり、反対致します。
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