府中町の特別支援教育の現状と課題について 2020年12月議会 一般質問

3.通級による指導の特徴

二見議員 第3に「通級による指導」について伺います。発達障害などで通級指導を受けている児童生徒が昨年(2019年)5月1日時点で13万4千人に上り、過去最高になったと文科省が公表しました。内訳は小学校11万7千人、中学校1万7千人、高校8百人です。

障害種別でみますと▽言語障害4万人▽自閉症2万6千人▽注意欠陥多動性障害(ADHD)2万5千人▽学習障害2万2千人です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、「身の回りの特定のものに意識を集中させる脳の働きである注意力に様々な問題があり、又は、衝動的で落ち着きのない行動により、生活上、様々な困難に直面している状態を言います。

これまであまり知られてこなかった障害の一つで、「注意欠陥多動性障害」という診断名は、1994年からだそうです。

活動に集中できない、気が散りやすい、物をなくしやすい、順序だてて活動に取り組めないといった「不注意」と、じっとしていられない、静かに遊べない、待つことが苦手で、他人の邪魔をしてしまうといった多動衝動性が、同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に、強く認められます。

「故意に活動や課題に取り組むことを怠けている」「自分勝手な行動をしている」などとみなされてしまい、これまで障害によるものだと理解されてきませんでした。そのため、まわりの大人から行動を強く規制されたり、叱られることも多く、そこから「自分はどうせ、何をやっても叱られる」といった無力感に陥ってしまうこともあります。

学習障害も知られるようになったのは比較的最近です。

学習障害とは、学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態を言います。

全般的な知的発達に遅れはないのですが、聞く、話す、読む、書く、計算すること、推論する能力のうち特定のものが苦手です。
学習障害は、まだ十分に知られていないうえに、一部の能力を習得することと使うことだけが難しいので、「単に学習が遅れている」「本人の努力不足」とみなされてしまい、障害だとは思われていない。

柳家花緑さんという落語家がいますが、識字障害(ディスクレシア)という学習障害があることを公表しています。書かれた文字を見て脳が認識して理解するのに時間がかかる障害です。書くことも難しい*1。

*1)落語を聞きにきたお客さんにサインするとき演目の「芝浜」と書いて欲しいといわれて「浜松やりました」と書いてしまった。古典落語中の名作であり、「芝浜」という字は何千回、何万回と見てきたのに字が出てこない。(柳家花緑『僕が手に入れた発達障害という止まり木』幻冬舎)

花緑さんは「字が読めないために勉強全般に興味がなくなった」と言います。「教科書が読めないし、黒板に書かれたことをノートに書き写すこともできないので、クラスメイトが先に進むのに、おいていかれてどんどん差が広がっていく。字を読むのが苦手だから宿題もできない。その積み重ねで、勉強からますます遠ざかっていく」。小学校5年生のときの通知表に担任の先生は「気が散って学習に身が入りません」「根気よく復習しましょう」「勉強以外のことなら一生懸命やるのですが…」と書いていますが、40年ほど前ですから、担任の先生も障害だとはもちろん知らない。

花緑さんの本名は小林九というそうですが、「小林君は勉強しない子」という評価となり「もっと努力しなさい」というふうになるわけです。そして同級生は「バカな小林くん」と呼ぶ。落語のおかげで花緑さんは酷いいじめにはあわなかったようですが、発達障害のあるお子さんは学校でいじめられることが多く、いじめから不登校になる場合も少なくありません*2。

*2)島崎由貴らが関東(1都6県)の公立中学校の養護教諭を対象に行ったアンケート(回答266人)によると「発達障害のある生徒が背景に抱えている問題」の1位が「友人関係上のトラブル・いじめがあった」であった。「中学校における不登校・発達障害の生徒の傾向と支援の現状についての調査研究」(『東京学芸大学教育実践研究センター紀要』第5集、2009年)

文科省によりますと注意欠陥多動性障害や学習障害など発達障害の可能性がある児童生徒は全体の6.5%程度だと言われています*3。

*3)文科省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」

そういうなかで、通常の学級に在籍しながら週に1単位時間から8単位時間程度、障害に基づくさまざまな困難の改善・克服に必要な特別な指導を特別の場で行う「通級による指導」が1993(平成5)年より全国で制度化されました。2006(平成18)年からは学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症が対象に含まれるようになっています。

そこで質問です。

③「通級」の指導の特徴、指導の実際はどのようなものでしょうか。

教育部長 府中町では、通級指導教室を平成26(2014)年度に府中南小学校に設置し、指導をスタートしております。

この通級における指導は、小中学校に在籍する児童生徒のうち、障害による学習上または生活上の困難の改善・克服をすることを目的とし、週1時間から週2時間程度、障害に応じた特別の指導を実施しております。

現在、府中町では、小学校2校、中学校2校に通級指導教室を設置し、教員を配置しており、教員が配置されていない学校で、通級の対象となる児童生徒が在籍している場合には、教員が巡回し、指導に当たっております。

例えば、自閉症の場合は、他者と社会的な関係を形成することに困難を伴い、コミュニケーションの困難さや情報をとらえることが困難であるなど、通常の学級の一斉指導のみでは十分な成果が上げられない場合があります。そのような場合に、円滑なコミュニケーションのための知識や技能を身につけるための指導を個の実態に応じて指導し、その上で、絵や写真などの視覚的な手掛かりを活用しながら相手の話を聞くことやメモ帳を用いて自分の話したいことを相手に伝えるなど、実際に学んだ知識・技能を生活の中で実際に活用できるよう学びの場面の設定を行っております。

また、注意欠陥多動性障害の場合は、どの場面で困難さが生じているのか状況の要因を明らかにし、例えば、衝動性・多動性が強い場合は、ロールプレイを取り入れ相手の気持ちを考えたり、ビデオや絵で視覚的に示したりすることで、自分や周りの状況を振り返るなどの指導を行っております。

学習障害で、書くことが困難で、適切な文字をなかなか思い出すことができない場合は、パソコンで文章を書いたり、ノートをパソコンで取ったりすることにより授業内容を書くことができるようにしております。

通級による指導を受ける児童生徒に係る週あたりの授業時数については、当該児童生徒の心身の障害の状態を十分考慮し、保護者と連携を図り、時間設定を行い指導しています。

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