「パワハラ」「不当要求」をごまかす7つの手口 その4 パワハラ三要件を悪用
第4に、厚労省の定めるパワハラ三要素(三要件)の一つが欠けているからパワハラでないという手口です。
「職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすもの」(下線は田中議員、文書②1頁)。
田中議員は、この定義を引用し、次のように言います。
「審査請求が列挙する田中の議会事務局員に対するパワー・ハラスメント疑いは、いずれも厚労省3要件を満たしていない。とりわけ『優越的な関係』は田中側にはない。力関係でいうと、議長ら多数派議員をバックにしたベテラン事務局Aの方が新人議員を圧倒している。議会の仕組みや慣行を説き、田中提案を事務レベルで押しとどめ、発言を封じる議事を後押しするなど、改革提案の前に立ちはだかる。提案連発を抑える「田中封じ」が行われている。『優越的な関係』にあるのは、田中でなく、むしろ事務局Aと多数派議員の側である」(文書②1頁)。
ハラスメント定義の、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの、については長時間にわたって職員を詰めたという事実があり、「田中議員が怖い」、「田中議員の声を聞くと頭が痛くなる」という職員の訴えがあります。
この二つについても否定したものの、さすがに苦しい。
そこで田中議員が飛びついたのが、「3つの要件(要素)を全て満たす」ということです。
1つの要件を取り除くことができれば厚労省のパワハラ定義から逃れることができると思ったのでしょう。
そこで、田中議員が職員に対して優越的な立場にはない、むしろ職員が優位だと主張することにしたわけです。
「だからハラスメントが成り立つ前提としてのね、その力関係ですね。これは非常に、どちらが強いのか。私は、このハラスメントの前提が問題だろうと思いますね」(会議録44頁)。
議会事務局職員は「事務的知識が豊富で新人議員らのアドバイス役。議員より優位な立場』と見る議員もいる」(2021年5月31日の議会運営委員会に田中議員が提出した資料。政治倫理審査会資料3,54頁)。
これに対して、職員は第3回審査会で次のように反論しました。
「優位な立場なら、初当選議員である田中議員に言うことを聞かせることもできるはずですが、田中議員は事務局員のアドバイスに従っているように見えませんので、これだけでも、この説は間違いであることが分かります」。
この職員が言うように、もし、職員が優越的な立場にあるのならば、田中議員はその助言を受け入れているはずです。
しかし、そうではない。
職員の助言に対して、激しい言葉、きつい言葉を使い、怒って大声を出し、「あんたは異常」「あんたの頭脳構造を疑う」など暴言を吐き、ねちねちとやる。
優越的な立場でなくしてこのような狼藉(ろうぜき)を働くことができるのでしょうか。
また、たとえ「優位的な立場でなかった」としても、三要件の他の2つ、②業務上必要かつ相当な範囲を超え、③労働者の就業環境が害す言動が、議員としてのモラルに反することは明らかです。
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出典について
1月17日提出「田中説明」(文書①と略記)
1月23日第2回審査会会議録(会議録と略記)
2月8日提出「田中説明」その2(文書②と略記)
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