府中町における「子どもの貧困」対策について 2018年3月議会 一般質問
もくじ
2018年3月19日
■はじめに
府中町における「子どもの貧困対策」について質問いたします。
日本は、かつて「一億総中流」ということも言われましたが、1990年代後半から「格差社会」が意識され、21世紀になると「貧困と格差」が問われるようになりました。
経済協力開発機構(OECD)は2006年7月、日本経済を分析した対日経済審査報告書を公表。報告書は、日本の所得格差が拡大し、2000年にはOECD加盟国の中で相対的貧困率がアメリカに次いで二番目に高くなったことを明らかにしています。
2006年には「ワーキングプア」(NHKスペシャル)、2007年には「ネットカフェ難民」(NNNドキュメント)というテレビ番組がつくられ、2008年の年末には「年越し派遣村」が実施され、マスコミで大きく報道されました。
そして、同じ2008年に、当時、国立社会保障・人口問題研究所に所属し、現在は首都大学東京・都市教養学部教授の阿部彩氏が『子どもの貧困――日本の不公平を考える』(岩波新書)を出版されます。私は貧困問題についてずっと関心をもってきましたが、当時、この本を読んで大きな衝撃を受けました。
貧困世帯に育つ子どもが、学力、健康、家庭環境、非行、虐待などさまざまな点で、貧困でない世帯に育つ子どもに比べて不利な状況に置かれている。それは子どもには全く責任のないことです。
■子どもの貧困対策法
「子どもの貧困」が広く知られるようになったこと、イギリスで2010年に「子どもの貧困法」が成立したこと、2020年までの子どもの貧困の「撲滅」を宣言したことや、国内で「あしなが育英会」などの団体による法律制定への運動が展開されたことなどによって、2013年、日本でも「子どもの貧困対策の推進に関する法律(以下、子どもの貧困対策法)」が衆参両院の全会一致で成立し、翌2014年1月から施行されました。
子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的としたこの法律は、「 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない」(第2条)ことを基本理念とし、第4条で「地方公共団体は、基本理念にのっとり、子どもの貧困対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と述べています。
この法律を具体化していくために、同年(2014年)6月、「子どもの貧困対策に関する大綱(以下、大綱)」が定められました。
大綱は、「子どもの貧困対策法」の策定について次のように述べています。
「明日の日本を支えていくのは今を生きる子供たちである。その子供たちが自分の可能性を信じて前向きに挑戦することにより、未来を切り拓いていけるようにすることが必要である。しかしながら現実には、子供たちの将来がその生まれ育った家庭の事情等に左右されてしまう場合が少なくない。政府の調査によれば、我が国の子供の貧困の状況が先進国の中でも厳しく、また、生活保護世帯の子供の高等学校等進学率も全体と比較して低い水準になっている」
「日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝である。貧困は、子供たちの生活や成長に様々な影響を及ぼすが、その責任は子供たちにはない。子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図る子供の貧困対策は極めて重要である。そうした子供の貧困対策の意義を踏まえ、全ての子供たちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指し、子供の貧困対策を総合的に推進するため、政府として、ここに《子供の貧困対策に関する大綱》を策定する」
まことにその通りだと思いました。
■指針としての児童憲章
終戦の翌年に定められた児童憲章は、「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境のなかで育てられる」と前文でうたい、「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」「すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害から守られる」「すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整った教育の施設を用意される」「すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、わるい環境からまもられる」など児童の権利を12条にわたってかかげています。終戦直後の荒廃した社会環境のなかで、子どもを守り育てるために定められた憲章ですが、「子どもの貧困」をなくすうえで今なお重要な指針となるものです。
■国連総会における「子どもの貧困」定義
2007年には国連総会において「子どもの貧困」に関する定義が示されました。その内容をユニセフは次のように伝えています。
国連総会は、子どもたちが経験する貧困の特殊さにかんがみ、「子どもの貧困」とは単にお金がないというだけでなく、国連子どもの権利条約に明記されているすべての権利の否定と考えられる、との認識を示した。
この新しい定義によれば、「子どもの貧困」の測定は、一般的な貧困の判断(しばしば所得水準が中心となる)といっしょにすることはできない。なぜなら栄養、飲料水、衛生施設、住居、教育、情報などの基本的な社会サービスを利用できるかどうかも考慮に入れる必要があるからだ。
国連による「子どもの貧困」の定義もまた、私たちに重要な示唆を与えてくれます。子どもの貧困をみるさい、単にお金のあるなしだけでなく、さまざまな社会サービスを使えるかどうかということを考えねばならないということです。
■子どもの実態をとらえることの重要性
さて、「子供の貧困対策に関する大綱」の「基本的な方針」の3に「子供の貧困の実態を踏まえて対策を推進する」とあり、次のように述べています。
子供の養育について、家族・家庭の役割と責任を過度に重く見る考え方などの影響により、子供の貧困の実態は見えにくく、捉えづらいといわれている。子供の貧困対策に取り組むに当たっては、子供の貧困の実態を適切に把握した上で、そうした実態を踏まえて施策を推進していく必要がある。
我が国における従来の調査研究の取組状況を見た場合、子供の貧困の実態が明らかになっているとはいい難い点が認められる。このため、実態把握のための調査研究に取り組み、その成果を対策に生かしていくよう努める。
「子供の貧困の実態は見えにくく、捉えづらい」。そうだと思います。大阪府で、中学生、小学生の2人の子どもを育てているシングルマザーの方の訴えを、私たち日本共産党の志位和夫委員長が、先月(2月)5日に衆議院予算委員会で紹介しました。その訴えのなかに貧困が見えづらい原因の一つが語られています。
私は(生活保護を受けている)今より8キロ以上痩せていました。子どもたちを食べさせるために自分はあまり食べずにいました。生活に対する不安感が強過ぎて感覚がにぶくなっているのか、外に出てるときはお腹が空いているのに、家に帰って子どもたちを目の前にすると、その感覚を失うのです。貧しいのは私のせいなんだから私は食べたらダメ という脅迫に近い感情がそこにはありました。
お風呂は湯温をギリギリまで下げてお湯をため、シャワーは使わず、3人一緒に入っていました。お風呂から上がる時は浴槽の中にはずいぶんと冷めたわずかなお湯が残っているだけ。当時、子どもたちは「寒い寒い」と言いながら大急ぎでからだを拭いていました。
冬場でも洗い物はお湯をつかいません。水道代を下げる為に、野菜を洗う時はバケツに水を受け、その水やわずかなお風呂の残り湯でベランダ掃除やトイレの排水にも使いました。お風呂の残り湯はほぼ使い切ります。室内の電気も暗くなるギリギリまでつけず、また子どもたちを早く寝かせて私も電気を消して早々と布団に入っていました。夜テレビを見ることも楽しみもない夜です。
夏場、クーラーはつけず、汗だくで1日を過ごします。ただ寒さだけは辛かったです。惨めな気持ちになるからです。
1番辛かったのは無保険だった期間です。3年間、幼い子どもを1度も病院へ連れていけませんでした。息をひそめ、薄氷の上を歩いているような生活でした。
でもそんな生活は、外側からは見えにくい状態であったと思います。あまりにも恥ずかしい生活なので、周囲には悟られないようやっていました。
「昨日家おった?電気ついてへんかったから」とご近所さんに言われたら「外食に出かけててん」と答えました。
こんなに大変な暮らしをしているのに、その貧しい暮らしを知られたくないので、息をひそめ、うそまでついて悟られないようにしていた。そういうなかで、私たちは積極的に「子どもの貧困」を見つけだし、「全ての子供たちが夢と希望をもって成長」できる対策を立てなければなりません。
府中町 子どもの生活実態調査
昨年(2017年)7月、当町は広島県とともに「子どもの生活実態調査」を小学校5年生、中学校2年生とその保護者を対象に実施しました。先ほど紹介した『子どもの貧困』の著者である阿部彩教授が調査の監修をされています。
大変貴重な調査であり、「子どもの生活支援」の出発点をなすものだといえます。広島県の調査にあわせて府中町として共同実施されたことを高く評価したいと思います。
■貧困をとらえる3つの要素
調査は、見えにくく、捉えづらい貧困を3つの要素から光をあて定義しています。
第1に、低所得、所得の貧困です。世帯所得の中央値の半額に満たない貧困ライン(低所得基準)以下にあるかどうかで判断します。今回の調査では136.2万円以下を低所得とみなしています。
第2に、家計の逼迫です。経済的な理由で公共料金や家賃が支払えないことがあったのかどうか。電話、電気、ガス、水道、家賃、食料、衣料の7項目のうち一つ以上に該当するかどうか。
第3に、子どもの体験や所有物が欠如しているかどうか。これは相対的剥奪(Relative deprivation)あるいは物質的剥奪(Material deprivation)と呼ばれ、貧困研究の分野で著名な、イギリスのピーター・タウンゼントが提唱したものです。彼は、最低限のものを食べられて、着る服があれば貧しくないのか、それでまっとうな生活(decent life)と言えるのかと提起し、平均的な暮らしのなかにあるはずのものが「ない」ことを「剥奪」と呼びました。
タウンゼントは相対的剥奪について次のように定義します。
「人々が社会で通常手にいれることのできる栄養、衣服、住宅、居住設備、就労、環境面や地理的な条件についての物的な標準にこと欠いていたり、一般に経験されているか享受されている雇用、職業、教育、レクリエーション、家族での活動、社会活動や社会関係に参加できない、ないしはアクセスできない」状態である。
■相対的剥奪 15の指標
諸外国では相対的剥奪指標が貧困指標の一つとして採用されていますが、日本ではまだ全国的な指標が確定しているわけではありません。しかし、今回の調査は2016年に東京都が実施した「子ども生活実態調査」と同じ指標(要素)が使われており、比較検証のうえで有効性があると考えられます。
その指標とは「① 海水浴に行く/② 博物館・科学館・美術館などに行く/③ キャンプやバーベキューに行く/④ スポーツ観戦や劇場に行く/⑤ 遊園地やテーマパークに行く/⑥ 毎月おこづかいを渡す/⑦ 毎年新しい洋服・靴を買う/⑧ 習い事(音楽,スポーツ,習字等)に通わせる/⑨ 学習塾に通わせる(又は家庭教師に来てもらう)/⑩ お誕生日のお祝いをする/⑪ 年に1回くらい家族旅行に行く/⑫ クリスマスのプレゼントや正月のお年玉をあげる/⑬ 子供の年齢に合った本/⑭ 子供用のスポーツ用品・おもちゃ/⑮ 子供が自宅で宿題(勉強)をすることができる」の15項目であり、経済的な理由で15項目のうち3つ以上「ない」場合に生活困難とみなします。
そのうえで、低所得、家計の逼迫、相対的剥奪という貧困を捉える3つの要素のうち2つ以上に該当する場合は生活困窮層、いずれか1つの要素に該当する場合は周辺層に区分し、生活困窮層と周辺層をあわせて生活困難層とします。いずれの要素にも該当しない場合は、非生活困難層となります。
■生活困難層 小5が18.2% 中2が24.6%
当町の「子どもの生活実態調査」(暫定版)によると、生活困窮層と周辺層を合わせた「生活困難層」は、小学校5年生では79人(18.2%)、中学校2年生では78人(24.6%)にのぼっています。無回答がそれぞれ21.0%、17.7%とあり、この中にも生活困難層がいるとみた方がいいでしょう。広島県全体の生活困難層は、小学5年生25.6%、中学2年生27.8%です。当町は、県全体との比較では「少ない」といえますが、けっして喜べるほどの数値ではありません。
当町で就学援助を受けている小学生は18.6%(525人)、中学生は24.5%(308人)ですから、ほぼ生活困難層と重なっています。そこから考えますと当町の小学生のうち500人程度、中学生のうち300人程度、合わせて800人程度が「生活困難層」であると推定されます。
それに加えて、当町には3000人近くの就学前児童がおり、その20%なら550人、25%であれば700人弱が「生活困難層」に該当すると思われます。中学卒業後の16歳~18歳は1500人ほどおり、300人~400人弱が「生活困難層」と推定されます。
府中町の0歳から18歳までの子ども約9700人のうち2000人~2500人が貧困のなか、つらさを抱えて生きています。
■家計の逼迫 子どもの体験や所有物の欠如
経済的な理由で公共料金の支払いができなかったと回答した保護者の割合は小学5年生、中学2年生ともに非生活困難層がほとんどゼロであるのに対して生活困難層では1割台となっています。「《その他の債務》が払えなかったことがある」が小学5年生の保護者が17.7%、中学校2年生の保護者が19.2%です。20%から25%の保護者が生活困難層であり、その20%近くが借金の返済が滞っているか、滞りがちの状況にあり、家計は相当逼迫しているといえるでしょう。
ですから当然、「食料・衣料が買えなかったことがある」家庭が4分の1近くということになるわけです。
経済的な理由で子どもと体験できなかった割合もまた、非生活困難層がほぼゼロなのに対して、生活困難層は、博物館・科学館・美術館、キャンプ・バーベキュー、スポーツ観戦・劇場が1割から2割、遊園地・テーマパークは3割台となっています。
非生活困難層か生活困難層かによって体験の有無がきれいに分かれているわけです。
そこで伺います。
①以上、私なりに、「府中町子どもの生活実態調査」(暫定版)から読み取ったことを述べさせていただきましたが、町としてどのように受けとめられましたか。
■福祉保健部長 議員ご指摘の通り、平成29年7月に、当町は広島県とともに、「子どもの生活実態調査」を小学校5年生及び中学校2年生を対象に実施いたしました。回収率は、小学校の児童92.8%、保護者92.5%、中学校の生徒78.2%、保護者78.5%と高く、多く方に回答いただきました。現在、結果の取りまとめを行っているところでございます。
今回の「生活実態調査」は、貧困の実態を浮き彫りにし、世代間連鎖の要因やそれらを断ち切る方法を推定しうる調査内容となっております。
主な結果を少しご紹介いたしますと、広島県が、平成30年度の施策として掲げておられます「学習支援」については、当町でも「クラスで成績評価が下の方と答えた割合は、小学生で生活困難層が27.9%、非生活困難層が17.8%と生活困難層が10%多く、中学生では、生活困難層が48.8%、非生活困難層が28.1%と生活困難層が20%多くなっています。
「朝ごはん」については、「平日に朝食をとる頻度でいつも食べる」と答えた人が、小学生では、生活困難題も非生活困難題も変わらすほぼ93%でしたが、中学生では、生活困難題が82.1%、非生活困難題が92.8%と生活困難題が10%低くなっています。
また、一人で食べると答えた人が、小学生で生活困難層が20.3%、非生活困難題が17.4%、中学生では、生活困難題が37.2%、非生活困難題が33.1%と、生活困難層の方が、孤食傾向が見られました。
子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されることなく、健やかに育ち、夢と希望、意欲にあふれた自立した人間へと成長していけるよう、今後、調査結果を検証し、町の課題を抽出した上で、県の動向と連携していきながら、施策の方向性を検討していきたいと考えております。
子どもの貧困対策のあり方について
■ふたみ議員 次に、「子どもの貧困」対策のあり方について質問いたします。
このように「調査」からも、「子どもの貧困」対策は待ったなしだと思うのです。しかし、「子どもの貧困対策」には難しい問題があります。対策のターゲットを生活困難層に絞ると、生活困難層ではないが、そこに近い位置にいる子どもが対策からはずれてしまう。また、対策の対象になっていることを知られたくないので利用しない場合がある。また、利用したことが他の子に知られ、心ない言葉がかけられることもあります。貧困対策によって、子どもたちの心が傷つくようなことがあってはならないと思います。
この点で、福祉保健部長、教育部長と「子どもの貧困」について懇談したさい、お二人から示唆に富むお話を聞き、大いに共感いたしました。
第1に、あからさまな貧困対策ではなく、非生活困難層も含めた「なめらかな」対策を考えたいということ。第2に、子どもたちの困難を取り除くために、すでに町内でさまざまな取り組みが始まっており、それぞれの取り組みを繋いでいきたいということ。第3に、ボランティアの協力を得つつも個人の努力に頼りすぎることなくに、息長いものにしていくこと。
そこで伺います。
②まことにその通りだと思った次第ですが、改めて、町としての「子どもの貧困」対策のあり方についてお聞かせ下さい。
■福祉保健部長 町といたしましては、「貧困対策」と旗揚げして、子どもたちが集まりにくい施策をするのではなく、自然な形で、子どもたかが集いやすい施策をしていかなければならないと考えております。
また、単年度の施策ではなく、継続して支援できる体制及び施策としていかなければならないとも考えております。
そのためにも、草の根的に、町内に個々に事業実施している方々の情報についても収集し、統合的な取り組みをしていきたいと考えております。
子どもの医療費助成について
■ふたみ議員 第3に、子どもの医療費助成について質問いたします。
「調査」では、過去1年間に子どもを医療機関に「受診させなかった」と回答した生活困難層は小5で34.2%、中2で33.3%となっていて3割強が受診をひかえています。
当町は、昨年(2017年)4月から、子どもの医療費助成制度の対象を通院で小学校6年生まで広げましたが、1日500円の一部負担金(月4回まで)を課しています。住民税非課税者からは子どもの貧困対策のひとつとして、この一部負担金を徴収していません。2016年の12月議会で一般質問したときには約500人の子どもが対象になるとのことでした。残念ながら、それでもなお生活困難層の3割以上が受診抑制している。中学生は当町ではそもそも医療費助成制度の対象外であります。
全国では医療費助成は、①中学校3年生まで、②一部負担金なし、③所得制限なしが主流になっています。
広島県内23市町でも、通院で18歳の年度末まで助成する市町は5つ、中3までが6市町となっています。隣の岡山県は27市町村のうち高校生・18歳までが11市町村、あとは全て中3までです。一部負担金は、広島県内では熊野町をのぞいてあるようですが、岡山県では岡山市と赤磐市だけです。しかも岡山市(通院・中3まで助成)は就学前までは一部負担金なしで、赤磐市(通院・18歳まで助成)は中3まで一部負担がありません(高校生は1割負担)。
子どもの医療費の負担軽減ほど、暮らしに困難を抱える親を助け、即効性のあるものはありません。
さきほど紹介したシングルマザーが、「3年間、幼い子どもを1度も病院へ連れていけなかったのが一番辛かった」と言ったとおりです。
一部負担金を徴収しない世帯を広げるというやり方もありますが、2016年12月議会でも申しましたように、1回500円、上限2千円を払う家庭、受給資格要件から外れ2割ないし3割を窓口で払う家庭、一部負担金を免除される家庭というふうに色分けされていくことは、同じ町に住み、同じ学校に通うものとして複雑な感情を生むものです。
2つめの質問のさいに申し上げましたように、非生活困難層も含め、「なめらかな」対策をと考えたときに、子どもの医療費助成を全国の水準、先ほど申しました①中学校3年生まで、②一部負担金なし、③所得制限なしにすることがもっともふさわしいと考えますし、そうすることが、「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」へ一歩近づくことだと思います。
そこでお尋ねします。
③現在の子どもの医療費助成制度を前進させるつもりはないでしょうか。
■福祉保健部長
子ども医療費制度については、平成29年度から対象を拡大し、通院は小学生卒業まで、入院は中学生卒業までとしております。加えて、医療費負担の軽減のため、住民税非課税世帯は無料で受診できる制度としております。
この度の調査は、小学生が対象となる前の期間も含まれているため、対象を拡大しました制度が安定した後の調査も必要であるかと思います。
町といたしましては、制度を拡大して1年経過していませんので、まずは、現制度の分析が必要と考えております。
乳幼児期の貧困対策
ふたみ議員 第4と第5に、乳幼児期の貧困対策について質問します。
子どもの貧困対策そのものが遅れているわけですけれども、とりわけ乳幼児期の貧困対策は、まだ手つかずの空白地帯だと言われています。
■低所得は乳幼児にも格差を生みだす
長崎大学の小西祐馬準教授が、長崎市内にある10保育所の保護者731人を対象に調査を実施し、420人が回答。低所得層の54%はひとり親家庭だといいます。
朝食や夕食で「果物をほとんど食べない」のは低所得層が17.3%なのに対し、中所得層は14.2%、高所得層は7.4%。逆に「スナック菓子を週5日以上食べる」は低所得層が13.5%、中所得層8.4%、高所得層7.4%となっています。
長崎市で医療機関にかかる場合、乳幼児医療費助成制度を使っても800円の自己負担金があります。このため「経済的に厳しくて行けない」が低所得層では7.7%いました。7千円程度かかるインフルエンザワクチンを毎年接種しているのは、高所得層60.3%に対し、低所得層48.5%。おたふくかぜワクチンも高所得層は45.4%で、低所得層は28.7%と15ポイント以上開きがあります。
子どもに「大学まで進学してほしい」と望む人は高所得層で67.5%だったのに対し、低所得層は43.8%で、大きな違いがあり、子どもの未来を乳幼児期の段階であきらめてしまっていることが分かります。
乳幼児期は「人間形成の土台」で、基本的な生活習慣や自主性などを身につける時期です。アメリカの研究で、乳幼児期に貧困だった子どもは、学齢期に貧困だった子どもより成人後も貧困状態に陥るリスクが高いことが分かっています。
小西准教授は「貧困は人生のスタート時点から不平等を生み、子どもからさまざまな機会や体験、やる気を奪ってしまう恐れがある。国の対策は学習支援など学齢期が中心だが、より早期から取り組む必要がある」と指摘しています。(「西日本新聞」2016年2月2日)
■乳幼児期の貧困が能力の遅れにつながる
大阪府内の公立の認定こども園の副園長をされている小田美奈子さんは、府内5カ所の公立保育所から、2012年度に卒園した159人分の児童票を分析。(1)虐待や虐待疑いで関係機関の見守りリストに掲載されている11人、(2)養育に困難を抱えていて支援が必要な17人、(3)その他の131人――に分類しました。約170項目の能力を点数化し、3歳6カ月▽4歳▽4歳6カ月と5歳▽5歳6カ月と6歳▽6歳6カ月と卒園時――の五つの時点で、家庭環境と発達の関係はどうなっているのか。(1)と(2)のグループは(3)と比べて、3歳6カ月の時点で既に能力の獲得が遅れ、卒園時までその傾向が続くことが分かりました。「10まで数える」「左右が分かる」といった就学後の学力に直結する能力の獲得が遅れ、
「意欲」や「自制心」「勤勉性」などの試験で測りにくい力(非認知能力)でも明らかな差があるといいます。
「虐待を受けたり、養育が困難な家庭で育っていたりする子どもは、保育所の段階でさまざまな能力の習得に遅れがみられる」という指摘もあります。(「毎日新聞」2018年3月1日)
そこで伺います。
④当町では乳幼児期の貧困対策についてどのようにお考えですか。また、町としての取り組みがあれば紹介して下さい。
■福祉保険部長 町では、平成28年度より、幼稚園や保育所に通われていない、いわゆる所属のない就学前児童については、子育て世帯の孤立化を防ぎ、町全体で子育てを応援する「府中子育て応援カード(イクフレカード)事業」を行っております。
末就学児童のいる世帯を対象に、1世帯1枚カードを発行しております。このカードの機能として、「マイ保育所・幼稚園」登録をしていただき、選んだ保育所等の子育て支援事業への参加や育児相談が受けられ、また、希望者は、園からの事業案内も受けられるものでごさいます。イクフレカードにより、町内の子どもたちは、どこかの保育所等とつながり、町が支援に入る入口ができております。また、カードには、子育て協質店による特典サービス機能も設けております。
平成29年度からは、子育て支援課に、「府中町子育て世代包括支援センター」機能を整備し、母子保健コーディネーターを配置しました。
さらに、平成30年度からはネウボラセンター事業の実施により、相談体制の拡充及び産前産後ケア等の事業を行うなど、安心して妊娠・出産・子育てができる切れ目のないサポート体制を強化してまいります。
■ふたみ議員 ⑤乳幼児期の貧困対策のプラットフォーム(基盤)は保育園にあると言われています。その点でも待機児童の解消は急務と思われますが、町としてどのようにお考えですか。昨年12月議会で、「新しい需要数に沿った保育環境の整備を計画し保育事業を実施」し、「公募による保育所整備についても検討し、見直した保育需要数の確保を図」ると答弁されましたが、その後の進捗状況について教えて下さい。
■福祉保健部長 議員ご指摘のとおり、保育所は、保護者に替わって児童の保育をする機能と同時に子育て家庭への支援も大きな機能でございます。
先の議会で申し上けたとおり、今後の保育所等の整備方針については、子ども・子育て会議の意見を伺った後の決定となりますが、対策といたしまして、保育ニーズが増加しております2歳以下の児童を対象とした小規模保育所及び事業所内保育施設等の整備も含め、他の市町のような公募による保育所整備についても検討し、見直しました保育需要数を確保できる保育所整備について、早急に計画していきたいと考えております。
児童扶養手当の支給方法
■ふたみ議員 第6に、児童扶養手当について質問いたします。
児童扶養手当は、ひとり親家庭に対する自立を支援するため、18歳年度末までの児童を養育しているひとり親家庭の父または母等に支給されるものです。
児童扶養手当は、4月、8月、12月と4か月ごとに支給されています。しかし生活に困難を抱えている世帯では、日々のやり繰りがなかなか難しい。
あるシングルマザーはブログで次のように書いています。
「もらえるだけでありがたいんです。ありがたいんだけど、やっぱり毎月振り込んでもらえる方がありがたいですよね・・・。だって、まとまったお金が入った時は家計も安定して余裕をもって支払いも出来たりしますが、支給日前は大変な思いをされている家庭がたくさんあると思うんです。計画的に使えばいい。と言われたらそうなんだけど、じゃあお給料が4ヶ月に1回になったら大変じゃないですか?」(シングルマザーのリアルなブログ)
まことにその通りではないでしょうか。
2か月ごと支給の年金でも、払われた月はなんとかなるが支給月でないときは苦しいという声を聞きます。毎月払われる賃金でも支給日前はやはり苦しい。
しかしながら、4か月ごとの支給は「児童扶養手当法」第7条に定められたものですので、町としてこれ勝手に変えることはできません。
兵庫県明石市は、この国の規定に反しないよう、本人の希望をきいたうえで、毎月1か月分を無利子で貸付し、手当支給時にその費用を相殺するサービスを2017年度から実施しました。
そこで伺います。
⑥当町でも、明石市のような、児童扶養手当に連動した貸付を実施するお考えはありませんか。
■福祉保健部長 児童扶養手当は、現在、年に3回(4月、8月、12月)に4か月分を支給しております。直近の12月には、369名に、総額5758万4640円を支給しております。負担率は、国1/3、町2/3となっております。
議員ご指摘のとおり、回数を分けて支給してほしいという要望があるとお聞きしております。
国が支給月を現在の年3回から6回に増やす方向で、平成31年度中の実施をめざして、現在、調整されております。町としましては、国の動向に合わせた支払い回数で対応してまいりたいと考えております。
「朝食クラブ」の検討を
■ふたみ議員 最後、7番目の質問です。
「調査」によると、生活困難層では、朝食を食べない子どもが、小5で6.3%、中2で17.9%です。各学年が同率だと仮定すると小学生が約200人、中学生が約300人朝食をとっていないことになります。県も「朝ご飯推進モデル事業」を始めます。平日の朝、学校やその近くで食事を提供し、貧困家庭の子どもに限定しない方針だと聞きました。
日本より早く、子どもの貧困に取り組んできたイギリスには、「朝食クラブ」があります。朝日新聞の記事を紹介します(2017年4月27日)。
「始業前の教室で、並べられたパンケーキ、果物や牛乳を子どもたちが口に運ぶ。無料で自由に食べられる《朝食クラブ》だ。女児(10)は『朝、食べると頭がよく働く』という」
「朝食クラブは独自の施策で、財源は公衆衛生予算と政府の補助だ。所得制限を設けると、条件にギリギリ当てはまらない家庭の子を取りこぼしてしまうため、全員無料にした。《貧しい家庭》のレッテル貼りを避けるためでもある。同小の児童193人のうち、自宅で朝食をとるのは約半数だ。経済的に困っていない親も精神的に助かっている」
ここに、生活困難層と非生活困難層を分断しない、「なめらかな対策」の姿があると思います。
朝の給食によって「集中力が上がった」「けんかばかりする子が落ち着いた」「落ち着きがでて注意する回数が減った」という効果があるといいます。
そこで伺います。
⑦府中町も「朝ご飯」の提供を実施する方向で検討すべきだと思いますが、現時点での町の考えをお聞かせ下さい。
●福祉保険部長 町では、朝パッ君ネットワーク会議を中心とした「朝ごはん」の啓発活動及び児童センターにおいても「一升飯の会」なとによる子どもたちへの温かいお食事の提供など、子どもを対象とした活動がございます。
県のモデル事業についての詳細は現在のところわかってはおりませんが、今後詳細についで|貴報が入り、連携できるところがあれば検討してまいりたいと考えております。
第2回めの質問
■ふたみ議員 3点目の質問、子どもの医療費助成制度について、「制度を拡大して1年経過していないので、その推移をみて現制度の分析をする」との答弁でした。
「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」にするもっとも近道なのが子どもの医療費助成です。福山市も助成を拡充しました。全国的な動向、県内市町の動向をよくみきわめ、後塵を拝することなく、できるだけ早い段階に中3まで、一部負担金なし、所得制限なしに移行することを重ねて要望します。
4点目の質問、乳幼児期の貧困対策について、「府中町子育て応援カード事業」の取り組みとともに「府中町子育て支援世代包括支援センター」、新たに立ち上げられるネウボラセンター事業をあげられました。①二つのセンターについての概要を教えて下さい。
6点目の質問、児童扶養手当についてですが、国の支給が年3回から6回にする方向で動いているという答弁でした。実現すれば今より、やりくりしやすくなるはずです。実施後なお問題があるときには、貸付について改めて検討していただければと思います。
■福祉保険部長 「子育て世代包括支援センター」は、妊娠・出産から子育てまでの相談にワンストップで応じる窓口として、国が全国の自治体に設置をめざしているもので、主な機能といたしましては、1つは、妊娠期から子育て期にわたるまで、地域の特性に応じ、「専門的な知見」と「当事者目線」の両方の視点からの切れ目のない支援二つ目は、ワンストップの相談窓口において、妊産婦や子育て家庭に対して、個別二ーズに対応した必要なサービスが利用できるようなきめ紐かい支援三つ目は、地域の様ノマな関係機関とネットワークを構築し、必要に応じて社会資源の開発等を行い、支援する等でございます。
町では、平成29年度から、子育て支援課に、母子保健コーディネーターを配置し、「府中町子育て世代包括支援センター」として体制を整え、母子保健事業と子育て支援機関等と連携を図りながら、切れ目のない相談等支援を実施しています。さらに、相談支援の拡充や産前産後ケア等の事業を行い、安心して妊娠・出産・子育てができる切れ目のないサポート体制を強化するため、支援の入り□である母子保健担当部署を主センターとして、平成30年度から福寿館に「ネウボうふちゅう」を開設するものです。
■ふたみ議員 つぎに子どもの貧困対策を進めていく体制について質問します。
子どもの貧困問題に対処していくためには、関わりのある部署やボランティアの人たちの知恵と力を集める「子ども支援会議」のようなものを作り、恒常的に相談しながらやっていく体制が必要だと思いますがどうでしょうか。また、部署を超え、全体をつかむために、子ども支援専任の職員の配置すべきだと思いますが、どのようにお考えですか。
■保健福祉部長 まずは、子ともの支援をできる体制づくりの強化が必要と考えております。関係機関が連携できるよう、自由に意見を出し合える支援体制を作ってまいりたいと考えております。
職員の配置等につきましては、現在は考えておりませんが事業を進めていく中で必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
■ふたみ議員 3つめに、子どもの居場所づくりについて質問いたします。
子どもの貧困対策にとっても、大切な柱の一つは居場所づくりです。府中町には、北部には、昨年できました「ハッピーズ」、南部には10年前にできました「バンビーズ」という児童センターがあります。
先日、両方の施設を見てきましたが、両方ともよく考えられた素敵な施設で、たくさんの方が利用されています。
利用者は乳幼児とお母さんが一番多く、ついで小学生だそうです。中高生の利用について尋ねると「もっと来て欲しい」とのことでした。南部のバンビーズには、スタジオが2つもあり、ドラムやキーボード、アンプなどが揃っています。18歳までの利用料は無料です。また、両センターとも卓球やバスケットなど体を動かすことできるし、勉強する場所としてもいい。小学生の利用時間は4月~9月は18時まで、10月~3月は17時までとなっていますので、それ以降は中高生タイムです。
施設は0歳~18歳まで利用できるものになっているのに、中高生の利用が少ないのはもったいないです。中高生の活用を促すような宣伝、取り組みをしたらよいと思いますが、いかがでしょうか。乳幼児から18歳までを対象にするわけですので、乳幼児、小学生、中学生、高校生と専門的な対応ができるように職員を増やすことも、運営主体は社会福祉協議会ではありますが、合わせて検討していただきたいと思います。
■保健福祉部長 児童センターは、0歳から18歳までの児童が利用できる施設です。中・高校生にもたくさん利用していただきたいと思っております。
現在、児童センターでは、中・高校生委員会を設置し、自分たちで事業の企画・実施をしてもらっています。 23名の中・高校生たちが所属し、児童センターから魅力発信しています。もっと多くの中・高校生に利用していただけるよう、町としても、メニューの工夫及び広報等をしっかりしてまいります。
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■ふたみ議員 子どもの貧困対策は、子どもの暮らし、教育、そして居場所という3方面からの対策が必要だと言われています。私は総務文教委員会に所属しており、今回は子どもの貧困問題ならびに貧困対策で、教育にかかわる問題については質問しておりません。総務文教委員会の場で、改めて取り上げることを表明いたしまして質問を終わります。
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