憲法のこころを聴く(1) 日本国憲法の〝こころ〟とは
(7)政治道徳の法則
【正文】
われらは、いづれの国家も、
自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、
政治道徳の法則は、普遍的なものであり、
この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
【池田訳】
わたしたちは、信じます。
自分の国さえよければいいのではなく、
どんな国も、政治のモラルをまもるべきだ、と。
そして、このモラルにしたがうことは、
独立した国であろうとし、
独立した国として
ほかの国ぐにとつきあおうとする、
すべての国のつとめだ、と。
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」。小泉純一郎さんが首相だったころ、自衛隊のイラク派兵にさいして「つまみ食い」した部分です。
よく、「文脈を読む」といいますが、一つひとつの文は文章全体のなかで理解することが必要です。このあとに述べられている政治道徳の法則が何を意味するのか、そこまで考えれば、決してこのような引用の仕方はできなかったはずです。
「政治道徳の法則」(laws of political morality)とはなんでしょうか。
それは、いままで述べてきた日本国憲法前文の考え方を指していると思います。
政府の行為によって再び戦争を起こさないという決意。「人民の人民による人民のための政治」という民主主義の原則。世界の平和を愛する人びとの公正さと誠実さを信じようとする姿勢。独裁政治、奴隷状態、自由への抑圧、不寛容をなくし、平和な世界をつくろうという抱負。世界中のすべての人に、自由で、豊かに、平和に生きる権利があるという「平和的生存権」の思想。
これらすべてが、新しい時代の政治的モラルの原則(laws)であり、それは普遍的(ユニバーサル)なものだと日本国憲法はいっているのではないでしょうか。これらの、新しい時代の政治的モラルの原則こそが、あらゆる力をかたむけて達成すべき「気高い理想と目的」なのです。
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