「都市再生」と府中町の未来 (下) 「アメニティ」篇
もくじ
以下の原稿は、府中町議会の公式記録ではありません。また、年号については西暦に統一しています。
《2回目》
3.アメニティと都市
大都市偏重の都市再生と理念の欠如
1回目の質問の冒頭で、国の都市再生政策(・施策)は、大都市向けのものと、その他の中小都市向けのものとの二本立てになってると述べました。
都市再生政策の中心はあくまで大都市にあり、一般的な都市向けの施策は、大都市向けの施策より限定的なものにとどまっています。
また、都市再生特別措置法(2002年)が制定されてから四半世紀近くが過ぎましたが、一部の地域を除き、全国の都市は人口減少に歯止めがかからない状況です。このことから都市再生特別措置法に基づくさまざまな施策は、実際の都市再生に結びついていないのではないか。
その最大の要因は、都市再生がバブル破綻の後始末として考え出されたことにあります。そこには、再生すべき都市のあり方、都市はいかにあるべきかという理念がありません。数ある施策はバラバラで、体系性がなく、焦点が定まらない。だから、ただただ高いビルが建ち、都市のなかに部分的な「賑わい空間」が現れるにとどまるのです。
かつての国交省(国土庁)におけるな理念
では、かつての国交省はどうだったでしょうか。1987年、当時の国土庁が策定した「第四次全国総合開発計画」、いわゆる四全総には次のような記述があります。
〔快適環境の形成〕国民の環境への要請の高度化に対応し、清浄な空気、静けさや歴史的雰囲気など良好な環境を維持増進し、都市、農村を通じ快適な生活空間をつくりあげていくことが重要となっている。このため、これらすべての要素を含めて地域ごとに快適性向上のための方向づけを行い、各種施策の総合的、計画的な展開を図る。また、緑地、親水空間等快適性増進のための社会資本整備の推進に加え、廃棄物処理施設、道路等の整備に当たっても、緑地帯の整備や歩行者に配慮したゆとりある道路づくりをするなど、社会資本に快適性の付与を図る。
これらの施策の実施に当たっては、民間事業者の協力や住民の自主的な行動が求められるので、環境教育の普及、活動組織づくり、アメニティ向上の活動助成のための様々な主体の任意、自発的な参加による基金の創設などにより各主体の積極的な活動を進める。
(国土庁『第四次全国総合開発計画』42頁)
ここで「快適な空間」「快適性」と表現されているのが、「アメニティ」です。
1980年代、当時の建設省や国土庁、環境庁には都市のあるべき姿についての理念があり、それが「アメニティ」だったのです。しかし、残念なことに、バブル崩壊とともにこの理念は後景に退いてしまいました。
そこで 2回目の質問は、この「アメニティ」と都市のかかわり、府中町の町づくりについて伺います。
(1)「地方の時代」とアメニティ
全国に広がるアメニティ
高度経済成長期は1970年代前半で終わりました。急激な経済成長は、都市の過密と地方の過疎、公害や環境破壊など社会の歪みを伴いました。また、これまで追求してきた「豊かさ」そのもののあり方が、広く問い直されることとなったのです。
こうした状況のなかで、1970年代後半になると「地方の時代」が提唱されます。中央集権化や東京一極集中を乗り越え、地方が主役となる「参加型分権」や、一村一品運動など、独自の地域おこしの取り組みが始まりました。
「アメニティ」は、この「地方の時代」と密接につながっています。1979年、「地方の時代」を提唱した長洲一二・神奈川県知事は、「生活環境に、やすらぎとうるおいと美しさを求める『アメニティ』の実現を目指して、ハードとソフトをつなぐ施策を工夫していきたい」と表明しました。
知事はこの理念を、①歴史的景観の「保存」から「活用」への転換、②景観ルールを決める「まちづくり条例」の制定、③水辺と緑のネットワーク、という形で具体化を図ったのです。
1980年代になると、建設省や国土庁が、魅力ある街づくりや環境整備の基本理念として「アメニティ」という考え方を採用しました。
また、環境庁も1984年度から、市町村の「アメニティ・タウン計画」に助成する事業を開始し、快適な環境づくりを積極的に後押ししました。
一地方から始まった「アメニティ」は全国に広がり、建設省や環境庁の方針にもなったのです。充実した「アメニティ」のある都市づくりは順風満帆、前途洋々であるかのように思われました。21世紀には地方都市とアメニティが主役になるだろう。誰もがそう思ったわけです。
アメニティなき都市像への警告
国交省の「新都市への提案」のなかで、当時、東京大学大学院の助教授であった城所哲夫氏は、次のように指摘しています。
「日本にとって、20世紀とは、また、猛烈な都市化の時代でもあった。これに対して、21世紀は、都市文化が花開く時代となろう。このような時代に育まれる都市は、アメニティ(生活の豊かさ)を実現する都市であることが望まれる」*4)
城所氏はこのように、21世紀の都市への希望を語るとともに、「地域が育んできた歴史や文化を消し去った、無味乾燥な開発からは、都市の新たな物語は紡ぎ出せない」と警告しました。
現実はどうでしょうか。「地方の時代」が提唱されてから半世紀近くが経ち、21世紀もすでに四半世紀が過ぎました。それにもかかわらず、都市は、地域固有の歴史や景観を壊す、画一的な開発が続いています。
だからこそ、真の意味で「都市再生」を果たすために、「アメニティ」の理念に立ち返り、都市のあり方を根本から問い直すべきです。
*4)国交省「国会等の移転」ホームページ
(2)アメニティとは
アメニティは贅沢品ではない
「アメニティ」という言葉で多くの人が思い浮かべるのは、ホテルなどにあるシャンプーや歯ブラシといった「アメニティグッズ」だと思います。これは利用者の「快適な」滞在のために提供される備品のことです。
一見すると、日用品のサービスと都市政策の理念は、似て非なるもののように思えるかもしれません。しかし、「人間のための快適さを追求する」という点で両者は繋がっています。
では、都市政策における「アメニティ」「快適さ」とは何でしょうか。快適な都市とはいかなるものか、「快適さ」の条件や基準はどこにあるのか。その理解は一筋縄ではいきません。それゆえ、「アメニティはとらえどころのない概念」とも言われ、これまで様々な解釈がなされてきました。
しかし、その原点に立ち返ることで、これまで曖昧だった「アメニティ」という言葉の輪郭が浮かび上がってきます。
「アメニティ」という言葉・概念は、もともと産業革命下のイギリスで、労働者の劣悪な住環境を改善する試みのなかから生まれました。つまり、その本質は、「贅沢品」や「プラスアルファの快適さ」にあるのではなく、耐え難い環境を、人間らしく生きるための環境へと変えていく営みのなかにあります。
この本質について、成城短期大学の講師であった酒井憲一氏は、論文のなかで次のように述べています。
「本当のアメニティとは何か。産業革命下の悲惨な生命・生存・生活環境の改善、つまり《生》と《活》が基底にあることを具現したものでなくてはならない」
アメニティをかたちづくるもの
酒井氏は、時代や地域によって形を変えるアメニティの要素を整理し、都市における定義を次のようにまとめました。
「『都市アメニティ』とは、人間が都市の場に個性的な生命体として生存し、生活していく上での不可欠な快適さを価値的、創造的に構成する安全、自然、歴史・文化、美的性、利便性が機能し、個性的と同時に総合的な人間の都市らしさを実現している状態である」
ここで酒井氏が、都市アメニティに不可欠な要素として挙げているのは、①安全、②自然、③歴史・文化、④美的性、⑤利便性、の5つです。
国の2002年版『環境白書』においても、「豊かな緑や清らかな水辺」「美しい景観や歴史的街並み」が、私たちの生活に潤いとやすらぎという「アメニティ」をつくりだすと言及しています。
また、日本都市計画学会は、都市改善のキーワードとして「利便性」「健康性」「快適性」の3つを重視し、アメニティが都市の安全性や健康の土台となることを示しています。
以上の見解を踏まえ、府中町においてアメニティを高めるために、何をなすべきなのか。以下、具体的に問題提起します。
(3)アメニティの観点で府中町をよりよくする
府中町は、広島市内中心部に近く、市内への通勤通学が便利です。町内のどのエリアに住んでも近くに小学校があります。スーパーも多く、買い物に不自由しませんし、イオンモールがあり、映画館もある。この利便性の高さが、府中町の魅力であり、人口が増えてきた大きな要因だと思います。
この利便性の高さに加え、アメニティ、すなわち「人間らしく生きられる快適な環境」が充実していけば、府中町の住みよさは、さらに確かなものになるはずです。
では、そのためには何が必要なのか。以下、アメニティ充実のために必要な課題を7つ提起します。
①広い空の維持
第1に、広い空を守ることです。
広い空は府中町の魅力の1つです。府中町の用途地域の指定は、戸建て住宅を主とした低層住宅地、戸建て住宅や集合住宅を主とした一般住宅地、一定規模の店舗、飲食店、事務所などの立地を許す複合住宅地が多く、容積率は200%です。
さらに、高さ10メートルを超えるか地上4階以上の中高層建築物には、町の指導要綱による規制がかかっており、これらが相まって広い空を守っているのです。
したがって、アメニティの観点からも、こうした建築規制の枠組みを安易に緩和せず、今後ともしっかりと堅持していくことが極めて重要です。
②開発限界ラインの堅持
第2に、町の開発限界ラインを守ることです。
府中町は高度経済成長期に、広島市のベッドタウンとして人口が急増し、山地を切り開いた住宅地がいくつもあります。これ以上の山林開発は、自然災害の誘発や有害鳥獣被害の拡大を招く恐れがあります。
「府中町都市計画マスタープラン」では、自然共生地域と山林保全地域の境界を「標高150メートル付近」と定めており、それ以上の高地での開発を防止するよう求めています。
アメニティの基盤である豊かな自然を守るためにも、この「開発限界ライン」を今後も厳格に維持していく必要があります。
③高い下水道普及率の維持
第3に、下水道普及率の高さを維持することです。
府中町の公共下水道普及率は、2025年時点で99%に達しており、町内を流れる河川の水質向上に大きく貢献しています。広島県全体の平均が77.5%にとどまり、県内23市町のうち半数以上が50%以下であるなか、当町のこの水準は極めて高い数字です。
生活排水による悪臭は、街のアメニティを損なう大きな要因となりますが、府中町内においてはその心配がありません。この良好な水環境があるからこそ、次に述べる河川の親水性の向上・「多自然川づくり」といった、さらなるアメニティの向上が可能となります。
しかし、これからは人口減少が進む一方、管路やポンプ場などの施設が老朽化します。維持管理にかかる経費が今後増大していくなかで、この高い普及率を維持できるのか、今後の見通しと運用のあり方が問われています。
④河川の親水性の向上
●多自然川づくり
第4に、河川の親水性を高めることです。
町内には、太田川水系の府中大川、榎川、八幡川という3つの川が流れています。しかし、榎川と八幡川はコンクリート三面張りの切り立った構造となっており、安全に水面へ下りて水に親しむことができません。
国交省は1990年代から「多自然型川づくり」に着手し、1997年の河川法改正などを経て、現在では、この「多自然川づくり」が全国の河川管理の基本方針となっています。「多自然川づくり」とは、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮しながら、本来あるべき豊かな生態系と多様な河川景観を保全・創出する取り組みのことです。
国交省は2006年に「多自然川づくり基本指針」を定め、それまでの限定的なモデル事業から脱却し、「すべての川づくりの基本」として、調査や計画・設計から維持管理にいたる「すべての行為」を対象とすることを明確に打ち出しました。
しかし、この指針を発表する際の公文書のなかで、国交省自らが、「依然として画一的な形状で計画されたり、水際が単調になるなど、課題の残る事例もまだ多く見られる」 *5)と、これまでの川づくりの問題点を厳しく指摘しています。
残念ながら、この指摘から20年が経過した今も、画一的で単調な古いやり方から脱却していません。しかし、だからこそ今、「多自然川づくり」を意識的に進め、河川における「アメニティ」を向上させることが求められています。
そしてこの問題は、決して他人事ではなく、府中町の河川整備においても直面している課題でもあります。

●護岸は必要最小限に
人々から河川を遠ざけている大きな要因は護岸です。榎川も八幡川もコンクリートの三面張りで、護岸が垂直に切り立っているため水辺に降りることができません。
「基本指針」では、護岸について「必要最小限の設置区間とし、生物の生息・生育・繁殖環境と多様な河川景観の保全・創出に配慮した適切な工法とすること」と定めています。この「基本指針」に照らせば、榎川や八幡川の護岸を放置するわけにはいかず、その構造は見直されるべきです。
また、1998年の国交省の「河川を活かした都市の再構築の基本的方向」では、都市河川の親水性について次のように述べています。
「都市内の身近な水辺として、親水性が求められる河川については、子供や高齢者も安全に水辺に近づけるようにする。川沿いの土地利用から、河川用地の確保ができない場合には、上流域での調節池の設置や河川の二層化等によってせせらぎを復活することも検討する」*6)
府中町の川に必要なのは、商業的な賑わい創出よりも、大人も子どもも安全に川に降り、水と触れ合える環境です。これこそが「多自然川づくり」の原点に沿った施策でしょう。
町内を流れる河川の管理権限は県にありますが、「多自然川づくり」の観点に立ち、親水性というアメニティが取り入れられるように県に対して積極的に働きかけて下さい。
*5)国土交通省HP「『多自然川づくり基本指針』の策定について~河川環境を取り戻し、人と川の関係を取り戻すために~」
*6)河川審議会 都市内河川 小委員会・中間報告
⑤公園のアメニティ向上
第5に、公園のアメニティを向上させることです。
公園に求められるアメニティとして4点指摘します。
一つめに、快適なトイレです。
町内には、大小あわせて55の公園(56か所)があります。
そのうち31か所にトイレが設置されており、清掃やトイレットペーパーの補充など、行き届いた維持管理がアメニティの向上に貢献しています。
ただし、便器の洋式化が不十分です。多目的トイレは洋式ですが、男女別のトイレは和式であり、この点の改善が必要です。
二つめに、木陰と緑陰施設です。
夏の暑さ対策として、公園における「木陰の創出」と「緑陰施設の整備」が必要です。国交省は暑熱対策として緑陰施設を活用した「みどりのクールスポット」を提案しています。緑陰施設は、植物で日陰をつくることで、利用者の体感温度を下げるための施設です。人工的な霧を発生させ、気化熱を利用して周辺の気温を下げる「ミスト」と組み合わせるとより効果を発揮します。

三つめに、災害に備えた設備の充実です。煮炊きができる「かまどベンチ」の設置や、生活用水を確保するための井戸の整備は、災害時の不自由な避難生活において、少しでも負担を減らし、アメニティを確保するために大きな効果を発揮します。

四つめに、「じゃぶじゃぶ池」などの親水施設です。これは公園内で安全に水遊びができる場所のことで、2023年9月議会の一般質問*7)で提起しました。広島県内には、天然の水遊びができる場所があちこちにあるためか、人工的に整備された「じゃぶじゃぶ池」は多くありません。
以前、墨田区の「ソラマチひろば」を通りかかった際、子どもたちが安全に水と触れ合える「じゃぶじゃぶ池」がありました。スカイツリーの真下で、「こんなところにもあるんだ」と驚いたんです。

墨田区 「ソラマチひろば」のじゃぶじゃぶ池
東京都内には、こうした子どもたちが日常的に水に親しめる「じゃぶじゃぶ池」や「親水広場」は、現在400か所以上も整備されています。
暑さ対策にもなり、子どもたちが安全に水に触れられる「じゃぶじゃぶ池」を全ての公園にとは言いませんが、例えば5つの小学校区に一つずつ設置すれば大変喜ばれ、町のブランド力の向上に繋がると考えます。
⑥街路の木陰とベンチの設置
第6に、街路に木陰とベンチを設置することです。
夏になると役場東のバス停で1本の木の狭い木陰に一人ずつ立っている光景が見られます。
街路にある木がつくりだす木陰が少なく、バスを待つ人びとが狭い木陰を取り合っているような状況です。
エコグリーンロードは、透水性・保水性の高い植栽基盤と大きな樹冠によって暑さを緩和し、にぎわい創出をめざす取り組みです。高齢者などが散歩の途中で一息つけるよう、緑と一体になったベンチ(グリーンベンチ)を設置し、熱中症を防ぎながら安心して歩ける環境づくりが求められます。
町内の街路にはアメリカフウとマテバシイが多いと伺いました。
両方とも大きな樹冠をつくるという特性を持っています。しかし、建築限界や架空線、信号機など様々な制約があり、一筋縄ではいきません。こうした制約を踏まえつつ、夏の暑い時期、街路にどうやって木陰を増やすのか、具体的な方策を検討していただきたいと考えます。
なお、エコグリーンロードは、国交省の「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」において、環境と健康に配慮した道づくりとして紹介されています。また、都市再生施策の6番目に紹介した「居心地が良く歩きたくなるまちなか」(「まちなかウォーカブル推進事業」)にも該当するものです。
高齢化が進むなか、街路に木陰をつくり、ベンチを設置することは、ぜひとも必要な取り組みだと思います。

⑦ポケットパークの整備による密集市街地対策
第7に、ポケットパークの整備です。
老朽化した木造建築物が密集し、防災機能が確保されていない市街地を「密集市街地」と呼びますが、当町には、この密集市街地が多く、地震や火災の場合、大きな被害が予想されます。
「密集市街地」の主な特徴として、次の3点が挙げられます。
第1に、幅4m未満の道路や行き止まりが多く、接道要件を満たしていなかったり、全く接道していない小規模な敷地が多いこと。
第2に、耐震性・耐火性の低い老朽木造建築物が多いこと。
第3に、公園が少ないこと。
この密集市街地の解消は当町の大きな課題の一つですが、なかなか進展していないのが実情です。

墨田区にあるポケットパークの一つ
そこで注目したいのは、2018年6月議会の一般質問*8)でも取り上げたポケットパークです。
ポケットパークは、「ベスト・ポケット・パーク」の略で、洋服の「ベスト」についているポケットのように小さい公園のことです。小さな敷地に、木陰とベンチ、これがポケットパークのミニマムスタンダード(最低基準)であります。
この小さな空間は、住宅密集地で火災が起きたときに延焼を防ぐ防災の役割を果たすとともに、日常の買い物や散歩の人が休憩し、安らぐ憩いの場にもなります。
世田谷区太子堂や墨田区では、ポケットパークが整備され、着実に成果を上げています。当町でも、防災とアメニティという両方の観点から、密集市街地にポケットパークを整備することが必要です。
この整備には土地と資金という2つの壁があります。
ヨーロッパの多くの自治体では、都市計画や地域コミュニティの保護を目的として、不動産の売買時に地方自治体が民間企業や個人よりも優先して土地を買い取れる優先購入権がありますが、残念ながら日本には、そういう制度がありません。
しかし、優先購入権はなくても、土地を手放すことを考え始めた地主さんに対して「まずは町に声をかけてほしい」と呼びかける仕組みをつくることは出来るのではないでしょうか。
また、必要となる財源については、「都市再生整備計画」を改定のうえ、国の「まちなかウォーカブル推進事業」などを活用することで、国からの交付金が受けられます。
*7)「府中町役場敷地内『親水施設』について」
*8)「府中町における密集市街地整備と『街づくり』について」
(4)街づくりの指針にアメニティの向上を
●計画のなかに生き続ける思想
アメニティという理念に基づいて、当町における7つの課題を提起しました。
21世紀に入り、「アメニティ」という言葉が話題に上ることは少なくなりました。しかし、その考え方は形を変え、今も国や自治体の具体的な施策のなかに「地下水」のように流れ、生き続けています。
例えば、当町の「第2次環境計画改訂版」(2023年)においても、基本方針④として「質の高い環境の創造」があり、「暮らしに潤いをもたらす質の高い都市環境」がめざされています。暮らしの潤いとはアメニティのことです。この基本方針の実現のための施策として「水辺環境の保全」「美しい町並みの形成」「歴史・文化資源の保全と活用」が掲げられています。これもアメニティ施策です。
また、1回目の質問で取り上げた「まちなかウォーカブル推進事業」などの都市再生手法*9)の一部にも、アメニティの考えが流れています。
●「利便性の高さ」とともに「アメニティの向上」を
当町はこれまで利便性の高さを基礎にして発展してきました。これからはこの利便性の高さに加えてアメニティを向上させ、もっと魅力ある町にすべきです。
当町は2001年に、都市の将来を示し、都市づくりの指針となる「府中町都市計画マスタープラン」を策定し、2016年に改訂しました。このマスタープランの目標年度は2020年であり、すでに6年が経過しています。
そこで質問です。
マスタープランの改訂のさい、アメニティを高めていくことを町の方針とし、問題を整理して体系的な施策をつくる考えはありませんか。
◆都市整備課長
議員ご質問の前段で、「都市アメニティ」の紹介、具体的には高度経済成長期から現在までの一部において置き去りにされていた生活の豊かさといったことが求められていること、都市と人間の関係性の現状から理想像、都市アメニティを高める考えとして「利便性」「快適性」といった要素が大切であることなど説明いただき、また、アメニティの観点で見た府中町の都市形成の現状やアメニティに沿った施策可能性を事例とともに紹介いただくなど見解を示していただきまして、大変、参考になりました。ありがとうございます。
当町では2026年4月から新たにスタートしたまちづくり計画であります「府中町第5次総合計画」で、まちの将来像として「みんなの『暮らしたい』がかなうまち あきふちゅう」とし、将来像実現のための基本的な方向性において、「当町の暮らし心地のよさに今後もさらなる磨きをかけていく」ことが必要であるとしています。この「暮らし心地のよさ」がまさに「都市アメニティ」に通じるものではないかと考えています。
それでは、まず「府中町都市計画マスタープランの改訂」について申し上げますと、今年度、都市計画マスタープランの改訂作業を行っているところです。
この改訂は、これまでのまちづくりの方針を転換するものではなく、当町のまちづくりにおける最上位計画であります「府中町第5次総合計画」との整合を図ることを目的としたものです。
第5次総合計画における生活基盤分野では、「基本目標5:いつも心地よく便利に『暮らしたい』」とした目標を定め、「快適さを感じる都市空間をつくる」、「暮らし心地を高める都市基盤をつくる」、「便利で暮らしやすい住環境をつくる」とする3つの基本施策を設定しておりますが、基本目標から基本施策の中でも「都市アメニティ」の要素や思いは入っており、これらを実現する「都市づくりの指針」としてマスタープランを改訂することから、議員ご指摘の「都市アメニティ」の考えを踏まえた計画であると言えるのではないかと考えます。
次に、「問題を整理して体系的な施策をつくること」に関しましては、都市計画マスタープランでは、従来から「都市」としての視野で方針を示すこととしており、個別の施策に関しては包括的な表現とすることに留めております。
先ほど申しました、第5次総合計画における生活基盤分野の基本目標から3つの基本施策、それにつながる単位施策では、例えば道路や公園、公共交通などに関することでは、快適性・利便性の維持・向上や、賑わい・憩いの空間の創出、バリアフリー化など、都市アメニティに資する施策を体系的に整理しております。
具体的には、施策全体における取組の方針として、ただ単に、道路計画にあるから道路だけをつくる、公園遊具を更新しなければならないので前と同じものを更新設置する、などといったことではなく、都市基盤の整備や更新の際には当町の「暮らし心地、快適性」を向上させるという「アメニティ」の観点を取り入れつつ推進することとしています。
このことから、改訂後の「都市計画マスタープラン」において、個別の施策を計画に位置付ける予定はありませんが、上位計画である「府中町第5次総合計画」で整理した施策体系により、都市づくりを推進していくことになると考えております。












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