憲法のこころを聴く(1) 日本国憲法の〝こころ〟とは
(3)人類に共通するおおもとの考えにもとづいている
【正文】
これは人類普遍(ふへん)の原理であり、
この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅(しょうちょく)を排除する。
【池田訳】
これは、人類に共通するおおもとの考え方で、
この憲法は、この考え方をふまえています。
わたしたちは、
この考え方とはあいいれないいっさいの
憲法や、法令や、詔勅をうけいれません。
そういうものにしたがう義務はありません。
民主主義はユニバーサル
「これ」がさしているのは、一般的には「人民の人民による…」という民主主義の原則のことだといわれています。私も最初はそう思っていましたが、今では民主主義の原則とともに戦争放棄を含めるべきではないかと考えるようになりました。それは先ほど説明したように、日本国憲法では戦争放棄と国民主権が分かちがたく結びついているからです。
「人類普遍の原理」は、池田訳では「人類に共通するおおもとの考え」となっています。「普遍の原理」の英文をみるとユニバーサル・プリンシプル(universal principle)とあります。障害者や老人はもちろん、全ての人に使いやすい製品をユニバーサル・デザインといいますが、同じ言葉です。
戦前や戦中、日本では「万邦無比(ばんぽうむひ)」(他の国に比べるものがない)という言葉がよく使われ、民主主義などという考え方は「神国日本」「皇国」の国体にそぐわない、と一蹴(いっしゅう)していたのです。そういうことのないように、この考え方は人類にとって普遍的(ユニバーサル)な内容をもつものだと言っているわけです。
民主主義・戦争放棄に反する改憲はできない
つぎもかなり重要です。
「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅(しょうちょく)を排除する」。まず、「これに反する一切の憲法」といっていること。憲法を変えることはできるけれど、民主主義と戦争放棄に反する改憲はできないということです。
そして、法令は法律と政令、地方自治体の条例や規則など、国や自治体から発せられる、国民に対して強制力をもつすべてが含まれています。これらも、民主主義のルールに反するものをつくってはならない。最後に出てくる「詔勅」ですが、これは天皇の発する命令のことで、「詔書(しょうしょ)」「勅書(ちょくしょ)(勅語(ちょくご))」をあわせて「詔勅」。悪名高き「教育勅語」などがそれです。
日本国憲法第4条で「天皇は…国政に関する権能(けんのう)を有しない」と規定されています。権利も能力もないということです。ですから本来、「詔勅」はないはずですが、「危ない」と思ったのでしょう。第98条でもさらに「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」という念の入れようです。
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