あまりにも杜撰な島根原発「広域避難計画」 街頭演説版
2018年12月議会での私の一般質問、「島根原発事故発生時の府中町の対応について」のエッセンスを街頭演説原稿にしました。
◆ご町内のみなさん
日本共産党、府中町議の二見伸吾でございます。この場をお借りしてしばらくのあいだ訴えをさせていただきます。
◆みなさん
先週の金曜日14日から今週の火曜日18日まで府中町議会が開かれました。今朝はその報告をさせていただきます。
私は、今回「島根原発事故発生時の府中町の対応について」質問しました。
島根県は、中国電力島根原発の事故を想定した広域避難計画(「原子力災害に備えた島根県広域避難計画」)を2016(平成28)年3月に公表しました。
島根原発から30キロ圏内の松江、出雲、安来、雲南4市の約39万人の避難先を、島根県内と広島、岡山両県の61市町村に設定。広島県の受け入れは松江市、出雲市、雲南市から17万1370人です。離島である大崎上島を除く22市町が受け入れます。
府中町は、出雲市鳶巣(とびす)地区にお住まいの520世帯1600人の方々を受け入れるということも決まっております。
◆みなさん
原発事故はあってはならないことですが、東京電力福島第一原発事故(以下、福島原発事故)が示すように、事実起こったことであり、今後も起こりうる。だからこそ広域避難計画も策定されたわけです。
不幸にして事故が起きた場合、私たちは出雲市から避難されてくる1600人の鳶巣の方々を受け入れ、安心して避難生活を送ってもらい、生活再建の手助けをする責任があります。
避難受け入れ先も決まっていて、くすのきプラザ、府中公民館、町立体育館の3つ。とても、1600人も避難できるとは思えません。そこで、一人あたり面積はいくらぐらいになるか、十分なトイレの数、温かい食事、簡易ベッドが必要になるが、どのような対策を考えているかと質問しました。
答弁を聞いて驚きました。「1人あたり通路等共用部面積を含み2㎡換算として算定」しているというのです。
2㎡といえば畳1枚分です。段ボールベッドを置けば通路もない。他人のベッドを踏み越えて移動するしかありません。プライバシーも守れません。トイレ、ベッド、食事についてはまだ何も検討していないということも分かりました。
原発事故を想定した避難計画ということになっていますが、計画は紙だけのものであり、実際には、事故は起こらないだろう。起きたときに考えればいいということなんですね。
◆みなさん
避難してこられる出雲市鳶巣地区1600人の方々の生活再建のために、速やかに仮設住宅をつくる必要があると思うが、いったいどこに550世帯分の仮設住宅を建てるのかと質問しました。
町の答弁は、仮設住宅を造る予定はない、というものでした。
私はその理由を聞いて大変ショックを受けました。
この避難計画は、自然災害と同じ、災害対策基本法第86条の9に基づく「広域一時滞在」であり、避難者の受け入れ期間は最長6ヶ月を想定。島根県、出雲市の見解では、半年の期間で仮設住宅の建築が可能と判断しているというのです。
◆みなさん
この広域避難計画は、原発再稼働のために作られたと言われています。
万が一事故が起きても、きちんとした受け入れ先がある、だから大丈夫だと思ってもらうことが狙いだと。しかし、実際にはわずか半年の一時滞在にすぎない。「広域避難計画」は島根県民、出雲市民をペテンにかけるようなものです。
東京電力福島第一原発と同じような事故が起きれば、島根原発から30㎞圏内のほとんどが帰宅困難地域になるでしょう。帰りたくても帰れません。自然災害なら一時退避して元のところに帰るのは当たり前のことです。しかし、原発事故は違います。戻ることができない。それなのに半年で戻る前提で計画が作られていることに大変驚きましました。
おそらく出雲市の方も、原発避難がわずか半年の「一時滞在」であり、半年後には、放射能が残留する出雲市へ戻り、仮設住宅に住むことになるなどとは夢にも思っていないでしょう。事故が起きても広島県や岡山県の市町村が受け入れてくれ、そこで生活再建ができると考えているはずです。
「広域避難計画」は国の指示で島根県や出雲市などが作ったものであり、避難が一時滞在であることは府中町の責任ではありません。しかし、半年過ぎたからあとは知りません、どうぞお帰り下さいということにはならないでしょう。
◆みなさん
島根原発と府中町の距離は135㎞です。島根原発が、福島第一原発のような事故を起こしたとき、府中町も安全とはいえません。
私たちが飲んでいるのは太田川の水です。島根原発事故が起きれば中国山地は間違いなく放射能によって汚染されます。そこから私たちの飲む水はやってくるのです。そして放射能を帯びた水は瀬戸内海へと注ぎ込みます。瀬戸内海は閉鎖性海域ですので、いったん汚染されれば外海へはなかなか出て行きません。瀬戸内の魚も牡蠣もたべることができなくなるでしょう。島根原発が事故を起こせば府中町も決して安全ではない。
瀬戸内海の向こう、愛媛県の伊方町には伊方原発があり、3号機が10月27日再稼働しました。伊方原発との距離は102㎞、遮るものはありません。伊方原発で事故が起きればひとたまりもないでしょう。
◆みなさん
自然災害は被害を小さくすることはできても、地震や豪雨をなくすことはできません。しかし、原発は違います。島根原発は2012年1月に2号機が停止して約7年が経ちますが、その間、電力供給が逼迫したことは一度もありません。しかも電力需要は年々減っています。
原発がなければ原発事故も起きず、避難計画も不要です。避難などしなくていいように原発を廃炉にしなければなりません。
それが2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原発事故の最大の教訓だと思います。
私は町長にこう尋ねました。
「安全で住みよい府中町にするためには、原発をなくし、廃炉にすることが必要ではないでしょうか。中国電力や国に対して島根原発第2号機の再稼働と第3号機の運転開始の中止、両機の廃炉を町として要請するおつもりはございませんか」
町長の答弁はたった一言、「中国電力にそういうことを求めるつもりはありません」でした。
町長もまた、原発事故が起きることを真剣には考えていないようです。果たしてそれでいいのでしょうか。
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