自治体戦略2040構想と府中町
2.公共私の連携――新しい公共空間と「自治体」
(1)プラットフォーム・ビルダーへの転換
「圏域」なるものによって、合併とは違ったやり方で行政の広域化が進められようとしているわけですが、「圏域」のもとで、あるいは「圏域」形成に向けて、住民に必要なサービスはどのようになるのでしょうか。「2040構想」において、「公共私の連携」とAI(人工知能)などよって「スマート自治体」にすることが提起されております。
「公共私の連携」からみていきましょう。
「公・共・私」とは、「公」が自治体、「共」が町内会など地域の支え合い(共助)、「私」は私企業と個人であり、この三者が連携をとるということです。
第2次報告において、2040年頃の地域社会をつぎのように描きます。
「人口減少と高齢化に伴って、自治体職員の減少、地縁組織の弱体化、家族の扶助機能の低下、民間事業者の撤退などが生じ、公共私それぞれのくらしを維持する力が低下する」(33頁)
「自治体は、経営資源の制約により、従来の方法や水準で公共サービスを維持することが困難になる」(7頁)
地域社会崩壊といわんばかりです。
そのような状況下で、自治体職員は、「プラット・フォームビルダー」「プロジェクトマネージャー」になれという。
ここでいう「プラット・フォーム」というのは直接的にはコンピューター用語からきているのですが、もとはといえば駅などのプラットフォームのことです。自治体職員はプラットフォームをつくること、企画立案に仕事を限定する。報告も「『公』が直接サービスを提供することは現実的ではない」とはっきり書いています(7頁)
だれが線路の上を走るのでしょうか。最も期待されているのは、町内会、老人会など地縁組織です。プロジェクトを企画立案し、マネジメントはするけれども汗をかくのは地域の元気なお年寄りにお願いしたいということです。
(2)新しい公共私の協力関係の構築
第2次報告は、「新しい公共私の協力関係の構築」として、シェアリングエコノミーの活用を掲げています。シェアとは分かち合うという意味ですが、「乗り物、住居、家具、服など、個人所有の資産等を他人に貸し出しをする、あるいは、貸し出しを仲介するサービスを指す」(『知恵蔵』)のだそうです。
経産省の「分散戦略ワーキンググループ」に出された資料*7には、「補助金より小さな自治体」「シェアリングエコノミーで公助から共助社会へ」というスローガンが掲げられ、
▼赤字運営の公共施設は、利用料をもらって民間利用者を募集。
▼介護・育児などの福祉サービスは、子育てシェア・家事代行シェア・ライドシェアサービス*8利用促進など地域内互助システムへ。
保育施設を増やす代わりに、「アズママ(子育てシェア)」による個人の子育て機能を導入。子育てを終えた女性に「エニタイムズ」で家事代行依頼をすることで、依頼主は気兼ねなく仕事に励める。……などなど。
*7)第4回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会 分散戦略ワーキンググループ資料4「シェアリングエコノミービジネスについて」
*8)個人の所有する自家用車を用いて、乗客を乗せ、目的地で降ろし、タクシーのようにその移動運賃を得るというもの。
第2次報告は「良質なアマチュアリズムの活用」だと言っていますが、インターネットを介して、福祉や運輸の仕事を素人にさせて、公務に代行させようというものです。ボランティアや有償ボランティアは、労働基準法の枠外にあり、最低賃金も保障されない。そういう働き方の人たちに置き換えるということです。
そこで質問です。
②報告は、自治体は「新しい公共私相互間の協力関係を構築するプラットフォーム・ビルダーへ転換する必要がある」と述べていますが、これは「公」の仕事を民間企業や町内会・老人会などへ肩代わりさせるものではないでしょうか。
■総務企画部長 2040年に向け自治体は、制度や組織、地域の垣根を越えて、資源(施設や人材)を賢く戦略的に活用する必要があります。また、地域の課題は地域住民自らの意思で状況に応じたきめ細かな対応が可能となることから、質問にありますように公・共・私が協力し合う場を設定する「プラットフォーム・ビルダー」への転換が求められているところです。
若年層の減少により、経営資源としての人材確保がより厳しくなる中、こういった方法は有効であると思われます。定年退職者や出産を機に退職した人など、築き上げた能力が十分活かされず、活躍の場を求める人も多いとともに、就職氷河期世代には、これまで十分活躍の場がなかった人もいるはずです。こうした人々が多様な働き方ができる受け皿を作り出す方策の必要性が高いと理解しているところです。
このことから、「公」の仕事を民間企業や町内会・老人会などへ肩代わりさせるものとは考えておりません。
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