府中町の特別支援教育の現状と課題について 2020年12月議会 一般質問


《第2回目》

二見議員 府中町における特別支援教育の現状について、大変よく分かりました。

特別支援学級に対して、町として独自の予算をつけ、教育支援員を配置しているという答弁でしたが、今年度は21クラス90人の児童生徒に対して30人の教育支援員を配置していると先日伺いました。障害の程度に応じ、ていねいに指導されていることをおおいに評価したいと思います。今後とも町費による特別支援員の加配を継続していただきたい。
  
①「合理的配慮」 2つの観点

私は今年の6月議会で「GIGAスクール構想と府中町の児童生徒の学習保障」について一般質問致しました。

これを読んだ保護者の方からメールをいただきました。文面からすると府中町ではないけれども広島県内にお住まいの方のようです。

その一部を紹介させていただきます。

「一人一人へのタブレット導入を、喉から手が出るほど望んでいる、一保護者です。タブレット導入が標準仕様でないから、書くことに困難、読むことが困難、音を拾うこと、何かしら型にはまった古い日本の学校教育のやり方に困難を抱え、学校に行けない子が、特別扱いは出来ないと、はねのけられる。広島は他県に比べ、とてもとても、遅れています。タブレットが遅くなるなら、他県の様に学習支援員を多く入れ、困難のある子に寄り添える人数を入れたらいい、それもできていない」

「親や子供の言うことを、学校は聞かないから、教育委員会がいいと言わないから、その子だけ使わせて、問題になるのが嫌だから、そうやってはねのける先生を専門家が一校一校説得していく、その大変さ、その気の遠くなる時間。ゆっくりじゃ遅いんです。早く、合理的配慮が遅れている広島に、タブレットを」。

「息子の様に板書も書けず、先生にメモをもらい、授業中は別の本を読んでいるように、と言われ、本を読むために学校に行っている子がいることを、知ってください」。

お子さんが学習障害で、授業でタブレットを使うことを強く望んでいることが分かります。

当町は「特別支援学級及び通級指導教室においては、現在もすでに個別の状況に応じて、ICT機器を利用した授業を実施しており、本人および保護者からICT機器の利用の希望があった場合は、実態に応じた利用は可能」とのことです。

メールをいただいた方のお子さんが、どういう学級に属されているのかは分からないのですが、府中町の場合は、特別支援学級と通級指導教室であれば、タブレットなどICT機器の利用はすでに行われているということですので、問題はクリアされているわけです。

しかし、学習障害をもっているお子さんが、特別支援学級でも通級指導教室でもない場合、「一斉授業の場面において、発達障害の児童生徒が、タブレットを個別に使用することは容易でない」という答弁でした。たしかにクリアすべき様々な課題があるように思われます。

先ほどの保護者の方が書かれているように、その理由が「特別扱いできない」ということであれば、それは乗り越えていく必要があるのではと思います。メガネや補聴器を特別扱いと思う同級生や保護者はいないと思います。ICT機器は学習障害をもっている児童生徒にとってメガネや補聴器と同じような役割を果たす場合がある。だから、その使用に対して「合理的配慮」が求められているのではないでしょうか。と同時に、ICT機器はメガネや補聴器と違う面もあります。多機能であることや、機器の使用によってそれぞれの障害を軽減する効果があるかどうかについて慎重な見極めがいるのではないかと思います。

小児科医の加藤醇子さんがタブレットの使用について「学習意欲が高まったことはとてもよかったのですが、タブレットやPCは補助具であり、特に音韻操作能力が低い場合、読み能力自体を著しく改善することはできません。改善の可能性がある低学年~中学年では、やはり専門的指導が必要です」*1と書いています。

*1)加藤醇子『ディスレクシア入門』日本評論社、194ページ

先日、学習障害についての講演会*2に参加しましたが、そこでも広島大学の氏間和仁准教授が「ICTの活用は、取り入れば良いわけではなく、指導のねらいを見極め、学びの本質に近づくための活用を目指したい」と述べていました。大切な観点だと思います。

*2)広島県発達障害専門家会議第5回シンポジウム「学習障害への気づきと支援~これまでの支援の成果と実績に学ぼう~」2020年11月1日

そこで質問ですが、
 特別支援教育における「合理的配慮」について、町はどのように考えているのでしょうか。

学校教育課長 「合理的配慮」については、現在、特別な支援が必要な児童生徒について、保護者と連携を行いながら、個別の教育支援計画を作成し、教育支援員の配置や柔軟な教育課程の編成、教材を配慮するなどの支援を行っております。

先ほどありました一斉授業の場面において、発達障害の児童生徒がタブレットを個別に使用することについては、タブレット活用がその児童生徒にとって、支援として適しているかの見立てが必要であると考えており、また、一斉授業においては、授業者1名で学級の授業を行っていくことになるため、まわりの児童生徒やその保護者の理解、当該児童生徒のタブレットの活用力、また、一斉授業の流れの中で、適した活用ができるかなど、検討しなければならない事項が多くあります。

そのため、そうした要望があった場合には、専門家や関係機関の意見等も聞いた上で、個々の課題に合わせた支援が行えるよう多様な方法の検討をしていくことが必要かと考えています。

ICT機器を個別に使用しての授業については、先ほどお話したとおり、具体的にイメージを持たせるなどの活用を行っておりますが、その他にも、ICT機器を利用しプリント学習を行ったり、形をとらえる漢字練習に活用したりできるものと考えております。

②福祉部局との連携強化

二見議員 もう一つお尋ねしたいと思いますが、2017(平成29)年、文科省と厚労省は共同しての「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト」を発足させ、翌2018(平成30)年3月にプロジェクト報告をまとめました。

報告は「発達障害をはじめ障害のある子供たちへの支援に当たっては、行政分野を超えた切れ目ない連携が不可欠であり、一層の推進が求められているところであると述べ、「特に、教育と福祉の連携については、学校と児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所等(以下「障害児通所支援事業所等」という。)との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有が必要だと述べています。

そのために「各地方自治体の教育委員会や福祉部局――当町でいえば福祉保健部だと思いますが――が主導し、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目なく支援が受けられるよう、家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進する」ことを課題としました。  

この報告を踏まえ、2018(平成30)年、学校教育法施行規則に次のような規程が新設されました。

「特別支援学校に在学する幼児児童生徒について、個別の教育支援計画を作成することとし、当該計画の作成に当たっては、当該児童生徒等又は保護者の意向を踏まえつつ、関係機関等と当該児童生徒等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならないこととする」(新第134条の2関係)。

そして、この規程を特別支援学級、通級による指導を受けている児童生徒についても準用するとしています。
報告が言うように家庭を真ん中にして教育と福祉の連携を進めることは大切です。

そこで質問いたします。
 報告には「国は、障害児通所支援事業所等と学校との関係を構築するため、各地方自治体において、教育委員会と福祉部局が共に主導し、「連絡会議」などの機会を定期的に設けるよう促す」とあるのですが、当町において、教育委員会と福祉保健部との定期的な協議の場というものはあるのでしょうか。また、日常的な連携はどうなっているでしょうか。

学校教育課長 現在、特別支援教育にかかって、障害児通所事業所等と学校との関係構築のための「連絡会議」を定期的に実施することは行っておりません。

しかし、障害児通所事業所と学校が、必要に応じて、連携会議やケース会議の実施や、個別に連携を図っております。

また、学校においては、特別支援学級の児童生徒、通級による指導を受けている児童生徒について、個別の教育支援計画、個別の教育指導計画を作成し、保護者の意向を踏まえつつ、当該児童生徒の支援に関する必要な情報を整理し、その上で、医療機関や福祉等と必要に応じて連携を図っています。

また、町では、県費によるスクール・ソーシャル・ワーカーを中学校区に1名ずつ配置し、月に1回教育委員会とスクール・ソーシャル・ワーカーとの連絡会議を実施しています。

スクール・ソーシャル・ワーカーは教育と福祉の両面に関して専門的な知識・技術を有し、家庭・学校・福祉をつなぐ重要な働きを担っており、児童生徒が抱える状況を改善・解決するための取り組みを行っております。

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