「平成の合併」、地方消滅論・地方創生と府中町
《第2回目の質問》
●高齢化社会危機論の誤り
2つめの質問に対して「地方創生は短期的に簡単に結果が出るものではない」という答弁でした。しかし5年も経って成果の兆しもないというのが現実です。人口が増える方向いくどころかさらに減る。東京一極集中も止まらない。地域の特性に即した地域課題の解決も合併によって出来なくなっています。
3つめの質問に対して「単なる人口減少ではなく『少子高齢化による年齢階層の偏り』が問題だと言われました。これは普通よく言われる「高齢化社会危機論」を言い換えたものです。
15歳~64歳ないし20歳~64歳(生産年齢人口)を「支える人」とし、65歳以上(高齢者人口)を「支えられる人」とする。
1965年には9人で1人を支えていた、2008年には3人で1人を支えている。2025年には2人で1人を支え、2050年には1人が1人を支えるようになるが、とても支えきれない。よく神輿をかつぐイラストが添えられ、危機感を煽っているわけです。
しかし、この説明は大変問題があります。65歳以上はみんな支えられる側になっていますが、この議場にいらっしゃる議員のみなさんの半分は65歳以上で、支えられる側ではなく支える側、神輿をかつぐ人なわけです。
議員だけではありません。2016年で全就業者数(6,465万人)のうち、60~64歳の者は8.1%、65~69歳の者は6.8%、70歳以上は5.1%です。就業者に占める高齢者の割合は年々増えていて神輿の上から下りてきている(2017年版『高齢社会白書』)。
女性(15歳~64歳)はどうか。1986年の就業率は57.1%でしたが2016年には72.7%と増えている。15.6%も神輿の上から下りて支える側に変わっているわけです。
逆に20歳~64歳でも支えられる側にいる人たちもいます。学生、専業主婦、ひきこもりなどです。
あと、神輿の上か下かその判断が難しい人たちがいます。それは年収200万円以下の非正規労働者です。年収200万円以下では、納める税金や社会保険料が正規労働者よりも相当少ない。その非正規労働者が年々増えているわけです。1984年は就業人口の15.3%、1990年には20%、2019年には37.8%と実に4割近くになっている。
ですから65歳以上を支えられる人とし20歳~64歳を支える人とする神輿の図は現在の状況を正しく捉えたものではありません。
私たちはずっと、「働いている人と働いていない人の比率で支える、支えられる関係を捉えるべきだ」とこの神輿の図を批判してきました。
自治体戦略2040構想研究会第1次報告を読みましたら、生産年齢人口と高齢者人口の比率を取り下げた訳ではないのですが、「非就業者1人に対する就業者の人数(子どもを含む非就業者と就業者の比率)は0.9~1程度で推移しており、大きな変化はない」(28ページ)と書いていて、こっそり認めたわけです。この100年間働く人と働いていない人の比率は1対1であり、老人が増えることは確かですけれども、支えられないことはありません。
(9へ続く)
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