市制移行はタダではない。――府中町の単独市制を考える 4
もくじ
市制移行はタダじゃない
町は、「住民の皆様にご理解を深めていただくための活動として情報発信や説明会等を行うとともに、アンケートを行い住民の皆様の意見を取りまとめます」と言っています(特別委員会資料)。
理解を深めるためには、メリットだけでなく、デメリット、特に町の財政的な負担、町民・町内業者の負担をきちんと理解する必要があります。
町から市になるにあたっては経費がかかります。タダではありません。

町作成参考資料には、「自治体により差はあるが、2億円前後の経費がかかっている。(システム改修や看板の修正など)」とあります(上図)。
2012年に市制移行した愛知県長久手市の場合、「臨時的経費」が、コンピューターシステム関係7,600万円、表示物3,400万円、印刷物1,200万円、消耗品・備品200万円、その他800万円で、合計13,200万円の費用がかかる見込みだと2010年の広報に書かれています(「経常的経費」は社会福祉事務所設置のための費用で、設置済みの府中町では、新たな経費は発生しません)。
福岡県粕屋町(かすやまち)議会の総務建設常任委員会の視察報告(以下、「粕屋町議会報告書」)によりますと 那珂川市の場合、「臨時的経費(市になるために要した経費)は3年間で1億8829.4万円。先進自治体の平均が2億円であり、「経費節減できたと認識」していると説明があったそうです。
那珂川市の市制移行は2018年でした。
それから10年近くが経ち、諸物価が高騰している今時点では2億数千万から3億円近くに経費が膨らんでもおかしくありません。また、米イラン戦争の影響で物価はさらに高騰し、品不足になることが予想されます。
特別委員会で、当町の場合、どのくらいの経費がかかると試算しているかと問うと、「試算はまだしていない」との回答でした。

(「広報ながくて」2010年11月号)
長久手市は、市制移行に関わる必要経費の見込みについて町制に移行する2年前に町民に広報などで知らせています。
当町では、市制移行について6月から住民説明会を開催し、11月にはアンケートを実施する予定です。
経費がいくら必要なのかということは重要な問題であり、数値を明らかにしたうえで、説明会やアンケートを実施すべきです。
国からの交付税は?
町作成参考資料には「移行経費は国からの特別交付税の対象となる」と書かれています。国からの補助がある、ということです。
では、「移行にかかった経費のどのくらいを国は特別交付税として措置してくれるのか。全部なのか半分なのか、4分の1なのか」と問いました。かかる経費が仮に2億円だとしても、交付税措置が半分なら1億円が、4分の1なら1億5千万円が、町の一般財源から支出されることになります。
町の答弁は、「分からない」というものでした。
市制移行にともなう町の財政支出がいったいくらなのか。試算もできておらず、国からの補助も明確ではない。
これは大きな問題です。
町のお金は実利のために
この間、町は放課後児童クラブ(学童保育)の有料化や、保育園・学校給食の食材費の補助金をカットしてきました。
学童保育の有料化による町の収入見込みは約3千万円。移行にかかる経費が2億円だとすれば約7年分、3億円なら10年分、無料を継続することができます。
町のお金は、ふわふわとした「イメージ」「ブランド力」などというものではなく、実利のために使うべきです。
町民・町内業者の経費は自己負担
つぎに町民・町内業者の負担です。
町長は中国新聞のインタビューで「市制移行には一定の労力とコストが必要だ。看板や印刷物の住所表記の手直しも住民にお願いすることになる」と述べています。
個人では、住所印を使っていれば「安芸郡府中町」を「**府中市」と作り直す必要があります(もちろんご自身がよければ「町」のままの印を使い続けることもできます)。
業者では、住所入りの封筒や請求書、領収書などの伝票類を使っていれば、それを破棄して新たなものを作るか、線を引いて訂正して使うか、町の表記のまま使い続けるかという選択を迫られます。
顧客リストなど、コンピューターシステムを使っている場合は、その改修費用もかかります。
2018年に単独市制に移行した福岡県那珂川市は、「市制導入により、民間企業等にも対応コストが必要になるが、行政として何か対応はされたのか」という問いに対して、「補助要望があったが、補助の妥当性を見いだせず、糸島市の市制移行の際にも実施をしていないということであったので、協力のお願いにとどめた」と答えています(粕屋町議会報告書)
このような先例から考えても、また、町長が認めているように、こういう経費は全て町民・町内業者負担になります。
景気がいいときならいざ知らず、物価高騰が続くいま、町のままでいればしなくてよい負担を町民・町内業者に強いるべきではないと考えます。
住所変更の手間
手続きの問題もあります。

福岡県那珂川町は、市制移行にあたって「市制施行後の住所表示と変更手続きのお知らせ」を配布しています。
この「お知らせ」によると、手続きをすることなく住所変更されるものが多いです。
しかし、手続きが必要とされているものがあり、それが携帯電話です。
また、相手方に変更手続きが必要かどうか確認が必要なのが、
勤務先、健康保険(国保を除く)の住所変更、生命保険・損害保険・有価証券、自動車損害賠償責任保険証、クレジットカード、町外の小中高校、町外の保育所です。
自動で住所表記が変わるのかと思ったら、手続きが必要だった。気づかず放置していたために、何らかの損害を被ることがあるかもしれません。
以上のように、町が市になるためには、町のコスト、町民・町内業者の経済的負担、手続きのための労力がいります。
そこまでして、市になる必要がどこにあるのでしょうか。












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