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資本論与太話 3.「搾取」のはじまり

Illustration: Chappy

 
「搾取」ってなんだろう

『資本論』の最大の功績の一つは、搾取(さくしゅ)の秘密を解き明かしたことです。この「搾」という字、ちょっと難しいですよね。

でも、どこかで見たことがありませんか。

キリンが「一番搾り」というビールを発売し、CMをどんどん流したので知名度が上がりました。そう、搾取の「搾」は「しぼる」と読みます。

つまり搾取とは搾り取ることであり、他人の労働の成果をわがものにすることなのです。

「搾取」という言葉を説明するときに、毎回この「一番搾り」を使わせてもらっています。キリンビールに感謝状を贈りたいぐらいですね。

搾取のない時代

では、この資本主義社会で、いったい「誰」から「何」を搾り取っているのでしょうか。この問題を考えるために、まずは人類の歴史をざっくりと振り返ってみることにします。

原始時代、人々は木の実を拾い、貝を集め、獲物を狩りながら、その日その日をなんとか生き延びていました。

当時の人々の骨を調べると、食料不足などで成長が一時的に止まり、その後回復したときにできる「ハリス線」がみられる例がかなりあり、食料事情が不安定だったことがうかがえます。

だから、男も女も、老いも若きも、協力して働き、みんなで分け合って暮らしていたと考えられます。

しかし、「平等であるべき」とか「協力しあわなければならない」と考えたからではありません。

もし誰かが、狩りをした獲物をひとり占めにすれば、仲間が飢え死にします。

仲間を失えば、自分自身も生きていけません。他人の労働の成果をわがものにすることが出来なかったのは、生産力が低かったからです。

このように原始社会は、みんなで分かち合う社会だったけれども、それは「貧しさ」ゆえだったのです。

農耕と牧畜がもたらしたもの

貧しくて平等な社会に転機が訪れます。

おそらく、こんなことがあったのではないでしょうか。

食べ物として集めた穀物の粒が地に落ち、そこから再び芽が出る。人々はそんな光景を何世代にもわたって見てきたことでしょう。

「今すぐ食べてしまいたい。けれど、これを植えれば、もっと多くの実りが得られるかもしれない」。

こうした経験の積み重ねから、意識的な作物づくり――農耕が始まりました。

牧畜も同様です。捕らえた牛やイノシシはすぐ肉にして食べたい。しかしそれを我慢し、つがいで育てれば子が生まれる。

こちらも長い時間をかけて、そのことに気づいたんだと思います。

このように農耕や牧畜が始まり、人々は食料を自ら生産するようになります。

やがて生産力が高まると、みんなが生きていくのに必要な分を超える生産物――剰余生産物が生まれるようになりました。

特定の個人やグループが、他人の生み出した剰余生産物をわがものにする。それが「搾取」です。

こうして、平等だった社会は終わり、富の偏りがある社会、「階級社会」が始まったのでした。貧しいときには搾取はなく、豊かになると搾取が始まる。歴史の発展とは面白いものです。

搾取のはじまり

階級社会が生まれたころから、奴隷制社会が現れます。奴隷は古くから存在し、メソポタミアやエジプトでも、戦争捕虜などが奴隷にされました。

古代ギリシャでは、鉱山や農業、手工業などさまざまな分野で奴隷が使われました。古代ローマでは、戦争によって大量の捕虜が奴隷となり、大規模な農場などで働かされました。

奴隷は主人の「所有物」であり、奴隷が働いた成果は、すべて奴隷主のものになります。奴隷主のために働く時間と自分のために働く時間の区別はありません。

では、日本の古代社会はどうだったのでしょうか。

ギリシャやローマのように、大量の奴隷が農場や鉱山で働く社会ではありません。農民は、生産物を税として納め、労役も課せられました。

奴隷そのものを所有しなくても、搾取は成り立ちます。形は違っても、他人の労働の成果をわがものにするという点では同じです。

年貢の納めどき

中世の西ヨーロッパでは、領主に従属する不自由な身分の農民を農奴と呼びます。

荘園は、領主の直営地と農奴の保有地に分かれていました。このほかに、農民が共同で使う牧地や森林もありました。

ポーランド南部のスウォショヴァ村。
中世後期、中央ヨーロッパに広がった農村の土地割りの面影を今に伝えています。
Photo: Florian Vataj / Unsplash

 

農奴は、領主の直営地で無償で働いたうえに、自分の保有地で収穫した穀物や畜産物の一部も領主に納めたのです。

奴隷と農奴はどちらも「奴」の字がついていますが、大きな違いがあります。奴隷は、働いた成果のすべてが奴隷主のものになりました。しかし農奴には、自分たちの取り分がありました。

共通しているのは、搾取のしくみが目に見えたことです。

江戸時代を例にとってみましょう。「五公五民」という言葉があります。年貢として五割を納め、残り五割が農民の取り分になる、という意味です。

「年貢の納めどき」という言葉があるように、実際に年貢を納めれば、自分たちが作ったもののうち、どれだけ納め、どれだけ自分たちに残るのか、はっきりします。

 

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資本論与太話 1.マルクスと資本論の時代 

資本論与太話 2.「資本論」とは何か 

資本論与太話 3.「搾取」の始まり (ここです)

資本論与太話 4. 資本主義的な「搾取」とは 

資本論与太話 5.新たな価値はどこから

資本論与太話 6.剰余価値の増やし方

資本論与太話 7.   機械制大工業 

資本論与太話 8.搾取の問題とともに社会保障が大切

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