議員報酬のあり方を考えるために
府中町議会の議会運営委員会では、2025年5月から2026年1月まで、議員報酬のあり方を5回にわたって議論しました。そこでまとまったのが、月額3万円の引き上げ案です。
2026年2月の全員協議会では、町に特別職報酬等審議会の開催を求めることを決定。
これを受けて8月18日、第1回府中町特別職報酬等審議会が開かれ、議員報酬の見直しについての審議が始まりました。
議員報酬はどうあるべきか。以下が私の見解です。
2026/09/23
1.なり手不足と議員報酬

(総務省「地方選挙結果調」をもとに二見作成)
選挙なしが増えている
上のグラフは市議(政令市を除く)と町村議の、無投票当選者数の割合の推移です(統一地方選挙)。
選挙がなくて選ばれる町村議員は、1975年は3.4%でしたが、2023年では30.3%に増えています。実に町村議の3割が無投票なのです。政令市議を除く一般市議の市議の無投票当選者は3.6%なのに町村議は30.3%で、格段に違います。
2019年5月から2023年4月までの4年間では、926町村のなかで無投票が254(27.4%)、候補者が定数に満たない定員割れの自治体が31もありました。
県内では、坂町、北広島町が無投票、神石高原町が定員割れを起こしています*1)。
一方、議員報酬が高く、定数が多い3市は定数よりかなり多くの立候補者が出ています。
福山市 議員報酬 63万5千円 定数38 立候補者56人
呉市 議員報酬 55万円 定数32 立候補者40人
東広島市 議員報酬 46万円 定数30 立候補者40人
府中町は2000年以降、無投票になったことはありませんが、近年の立候補者は18の定数に対して立候補者は20~23人で、決して多いとは言えません*2)。
*1)坂町は2015年と2023年が無投票。
北広島町は2006年の定数26で30人の候補者がいました。2009年は定数を20に減らして立候補者24人。2013年は定数18で立候補者19人、2017年は定数16人で立候補者17人、2021年と2025年は定数12で無投票となりました。
神石高原町は2008年、2012年は定数14で立候補者15人、2016年は定数14で立候補者12人で定数割れ。2020年は定数を10に減らして立候補者12人、2024年は定数10で立候補者11人です。
定数を減らすと当選しにくくなりますので、立候補者は増えない。選挙になっても、落ちる人がほとんどいない状況になっています。
*2)〔府中町議選の立候補者数〕2008年23人、2012年20人、2016年22人、2020年20人、2024年21人。
無投票「選挙」の問題点
選挙権は、国や県、市区町村の代表を選ぶ大切な権利です。
しかし、無投票選挙となると、一票を行使することができず、立候補者全員を信任するしかありません。選ぶことができないのです。
これでは選挙権はないに等しいことになってしまいます。
また、選挙が実施されなければ、それぞれの候補者に有権者の支持がどれだけあるのか分かりません。
また、候補者の公約も十分知らされることがない。町議の働きをはかる物差しを失うということです。
市議と町議の差がはげしい
なぜ、選挙が成立しないのか。
それは立候補する人が少ないからです。
ではなぜ、立候補する人が少ないのでしょうか。
仕事との両立、選挙への負担、家族の事情など、理由はさまざまです。そのなかでも、町村議会で特に大きな問題になっているのが、議員報酬の低さです。
あらゆる世代の男女が議員に立候補できることが理想です。そのためには、若い人や子育て中の人でも議員に挑戦できる条件を整えなければなりません。
その重要な条件が、議員報酬を生活できる水準にすることです。
議員の平均報酬月額(全国)は、都道府県が83万2437円、指定都市が80万3092円、市が43万8840円、町村が22万5495円です(総務省 2024年「地方公務員給与実態調査」)。
町村議は市議の半分でしかありません。
町村議は「議員報酬だけでは生計を維持できないほどの低水準」だと指摘されています(全国町村議会議議長会・都道府県会長会「町村議会の議員報酬の適正化を促進するための決議」)。
広島県内の市町はどうでしょうか。
政令市である広島市は86万円、中核市である福山市と呉市の平均が59万2,500円、一般市の平均が38万6,273円、町の平均が23万9,111円です。
一般市の市議と町議の差は約15万円にもなり、なぜこれほど差がはげしいのか理解に苦しみます。
人口の少ない市より低い
府中町は人口では県内市町で8位ですが、議員報酬(正副議長は除く)では、17番目となっています。
府中町より人口の少ない7市は、以下の通り、いずれも府中町議よりも議員報酬が多い。
府中市(40万円)、
三次市(37万1千円)
大竹市・竹原市・庄原市(35万円)
安芸高田市・江田島市(32万5千円)
市議と町議の仕事に基本的な違いはありません。しかし、議員報酬は大きな隔たりがあるのです。

2.議員報酬と民間労働者、公務員との違い
議員は、一日の労働時間や年間の労働日数が決まっているわけではありません。
そういうなかで、民間で働く人たちや町の職員の給料と単純に比較するわけにはいきませんが、給料であっても議員報酬であっても、そのお金で生活しているという事実に変わりはありません。
生活していくという点から見て、現在の議員報酬はどうなのかということについて考えてみましょう。
府中町の議員報酬は月額29万円、年額にして約500万円です。
年収500万円と聞くと、かなりいいのではないかと思われるかもしれません。
しかし、議員報酬は、いくつかの点で民間労働者や公務員の給料と異なっています。
表にまとめてみました。

第1に定期的な昇給があるかないかです。
民間でも公務員でも正規職の場合、毎年1回の昇給があり、歳とともに給料が上がっていきます。しかし、議員報酬は、何期務めても変わりません。
国家公務員ならば、地方機関の35歳(係長)の給与が月額291,000円で、府中町議の議員報酬とほぼ同額です(下の表。2024年度、人事院)。

府中町の職員ならば40歳と同じです。
議員の場合は、定期昇給のように報酬があがっていくことはないのです。
第2に、議員に退職金はありません。
一方、民間も公務員も平均受給額は2千万円前後となっています。議員に定年はありませんが、いつまでも続けるわけにはいきません。どこかで引退する。しかし、退職後の生活を保障する金銭はありません。
第3に、年金です。
議員年金は2011年に廃止されています。
議員以外の仕事がない人は国民年金に加入しています。
国民年金は、掛け金を満額払った人で約7万円、厚生年金は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額が約23万円です*3)(いずれも2025年度。日本年金機構)。
第4に、医療保険です。
民間企業に勤めている人は健康保険組合、公務員は共済組合に加入しています。
議員は国民健康保険で、健保・共済に比べて約2倍の保険税を払っていて、その額は年収の約1割にもなります。府中町の議員報酬は年間500万円ほどですが、私の場合、2026年度の国民健康保険税は年間50万円を超えています。
第5に、議員は4年に1度選挙があり、落選するリスクを抱えているということです。
このような点を考え合わせると、議員の生活条件は、報酬の額面とかなり違うのです*4)。
*3) 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準。
*4)「生活給としてそれなりの給料、議員報酬がもらえているところでは選挙にきちんとなっている。議員の給料は高いという人がいるが、国民健康保険、国民年金で将来暮らさないといけないのだから、議員の報酬というのは社会保障もセットで考えないといけない」(東北大学・河村和徳准教授。tbc東北放送ホームページ)。
3.議会の今とこれから
議員という仕事
議員の仕事は多岐にわたり、本会議に出席しているときだけ仕事をしているのではありません。
本会議以外にも、総務文教・厚生・建設消防の常任委員会のどれかに属し、委員会が開催されています。議会運営委員会や議会報特別委員会もあります。行政視察にも行きます。本会議は、議案や予決算の質疑、討論と一般質問があり、その準備もしなければなりません。
町民のみなさんから寄せられる要望事項は現地を見て町に伝え、その実現に努力しています。
労働時間・労働日数の定めがないということは、必要なこと、やらなければならないことがあれば、昼夜問わず、いつでもしなければならないということなのです。
これだけやればいいということもありません。そういう点では、議員の仕事のしかたは自営業の方々と似ています。
議員報酬 予算に占める割合
2025年度、府中町の議員報酬は18人あわせて9,611万円でした。一般会計総額(約250億円)に占める議員報酬の割合は、0.38%です。
改定案(月額3万円増)どおり報酬改定を行った場合、年間の所要見込総額は947 万円、一般会計に占める割合は0.04 ポイント増の0.42%となります。
ちなみに、府中市(人口3万7千人)は、議員報酬月額40万円(議長47万7千円、副議長43万3千円)です。その年間の合計が1億2807万2千円で、一般会計予算225億円ですから占める割合は0.57%です。
同程度の予算をもつ府中市が議員報酬に月額40万円(予算比0.57%)を支払っていても町財政運営に支障はありません。
ですから、府中町で議員報酬を上げても、そのことによって何かの予算を抑えなければならないということにもならないでしょう。
自粛ではなく
「町民の暮らしは大変。議員だけ上げるのか」という批判は当然あると思います。
私たちは決して自分たちの報酬だけが上がればよいと考えているわけではありません。
政府は、長年のデフレから脱却し「成長と分配の好循環」を実現するため、賃上げが不可欠であると位置づけています。
物価高を上回る所得の増加が必要です。
賃上げの流れが地方や中小企業に行き渡るためにも、「議員は自粛」ではなく、報酬を引き上げ、賃上げの流れを促進する。
私はその道を選ぶべきだと考えているのです。
バランスのとれた構成
理想的な議員の構成は、あらゆる世代の代表が男女ともに選ばれることです。
そのためには、あらゆる世代の男女が立候補できる条件が必要です。
府中町議会の現在の構成は60歳以上が12人(うち1人は今年8月死亡)、60歳未満が6人。60歳未満の人は他に仕事を持っています。女性は2人です。
兼業でなくても若い人たちが立候補できるような条件を整えたい。
議員に挑戦する人が増えることは、私たち現職議員が落選する可能性を高めることでもあります。
そういうリスクがあっても町民のみなさんの意思がより反映される議会をつくりたいと私は考えるものです。
また、新たな挑戦者に勝つことができるような議員活動を私たち一人ひとりがする。
そういう決意のあらわれでもあります。
(以上)












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