府中町のまちづくりと立地適正化計画 2021年6月議会一般質問

(補論)

コンパクトシティとは何か

コンパクトシティとは、そもそもどのようなものでしょうか。コンパクトシティはEU諸国で推進されている都市政策のモデルですが、さまざまな論争もあり、これがコンパクトシティだという定説はないようです。

海道清信名城大学教授は「郊外へと無秩序に低密・拡散してきた都市の発展方向を転換して、都市空間の全体構造(土地利用)を、まとまりのある(コンパクトな)形態に変え、活気のある中心市街地を維持・形成すること」*1が都市をコンパクトシティに変えることだと言っています。

海道氏は、コンバクトシティが持つべき空間的な基本要素として次の五つをあげています。

 ①密度が高い、より密度を高める。

 ②都市全体の中心(シティセンター・中心市街地)から日常生活をまかなう。近隣中心まで、段階的にセンターを配置する。

 ③市街地を無秩序に拡散させない。市街地面積をできるだけ外に拡張しない。

 ④自動車をあまり使わなくても日常生活(通勤、通学、買い物。通院など)が充足でき、身近な緑地・オープンスペースなどを利用できる。循環型の生態系が維持され、都市周辺の農地、緑地、水辺が保全活用される。

 ⑤都市圏はコンパクトな都市群を公共交通ネットワークでむすぶ。

日本でコンパクトシティが進められる理由が人口減少への対応であったり、中心市街地が寂れてゆくことへの対応として提起されたのと違い、ヨーロッパでは暮らしやすいまちをどうつくるのかが出発点になっています。都市をコンパクトにするのは、徒歩、自転車、公共交通で暮らせるようにするためにです。

渋滞から解放されるために、中心市街地への車の乗り入れを禁止し、「歩行者天国」化し、自転車専用のレーンがある。LRT(Light Rail Transit)、広電のような路面電車がまちを走る。こういうことを実現しているまちが世界にはあり、それをコンパクトシティと呼んでいるわけです*2。

日本のコンパクトシティは海道氏のあげた5つの指標のうち、「③市街地面積をできるだけ外に拡張しない」ということ以外は共通点がない、似て非なるものです。


*1)海道清信『コンパクトシティの計画とデザイン』学芸出版社、2007年、14頁。

*2)村上敦『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』学芸出版社、2017年。

「フライブルクは、全市民の70%以上が路面電車(トラム)の停留所から300メートル以内のエリアに居住しており、バスの停留所も含めると公共交通のカバー率は98%に及ぶ。日中の路面電車は6~8分に1本運行されているため、時刻表を見る必要がなく、早朝5時半から深夜0時半まで路面電車とバスで移動できる。それどころか、若者に夜遊びの自由を与え、飲酒運転を防止するために、金曜日、土曜日などの休前日には深夜でも30分間隔、24時間体制で路面電車が、そして郊外行きのバスが運行されている」14-15頁。


《参考文献》

谷口守編著『世界のコンパクトシティ』学芸出版、2019年
村上敦『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』学芸出版社、2017年
中山徹『人口減少と大規模開発』自治体研究社、2017年
中山徹『人口減少と地域の再生』自治体研究社、2016年
国土交通省国土政策研究会『「国土のグランドデザイン2050」が描くこの国の未来』大成出版社、2014年
海道清信『コンパクトシティ』学芸出版社、2001年
同『コンパクトシティの計画とデザイン』学芸出版社、2007年
中西信介「中心市街地活性化政策の経緯と今後の課題」『立法と調査』2014年4月
国土交通省「中心市街地活性化法の改正について」『中心市街地活性化ハンドブック』2013年
廣原孝一「本格的人口減少社会における国土計画」『立法と調査』2015年1月
築山秀夫「国土のグランドデザインと地域社会」『地域社会学会年報』第28集、2016年5月

 

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